当ブログにも頻出する単語の一つ、ファラン(farang)。
タイ好きなら、誰もが覚えてしまう言葉だろう。
日本国内ではまったく通用しないが、タイ好き同士の会話では、いやというほど出てくる。
とても便利なので、すぐに使ってしまう。
欧米人とか西洋人とか言ってもいいのだが、ファランという言葉の持つ語感と簡便性が気に入っている。
極端になってくると、タイとは関係のない国の話題でもファランという単語を使ってしまうほどだ。
「いやあ、フィリピンにもファランがいっぱいいてさあ」とか「中国でファランが旅行するのは大変そうだよ」とかね。
傍から聞いていると、さっぱり意味がわからない会話であろう。
まあ、タイ好き同士での会話なので、別にいいのだが。
ただし、タイ好きと言っても、夜遊び系に興味が無い人には、「ファラン」という言葉は少々耳慣れないかもしれない。
わたしも、タイで夜遊びを始める前に何度もタイを訪れているが、ファランという言葉はまったく印象に残っていない。少なくとも意識することはなかった。
バックパッカー同士の会話でも、普通に欧米人とか西洋人とか呼んでいた。
でも、夜遊びを始めると、ファランという言葉がとても身近に感じられるようになったし、頻繁に使うようになってしまった。
だって、便利なんだもん。
特にパタヤなんぞは、欧米人天国、右を向いても左を向いてもファランだらけ。タイ人も口を開けば、ファランがファランが、と口にしている。
もはや、わたしにとっては、ファランという単語は日本語同然である。
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ファランというタイ語の意味
そもそも、”ファラン”というタイ語はどういう意味なのか?
簡単にいえば、ヨーロッパ人のこと。
特に白人を指す。
つまり、日本語的な感覚では、西洋人や欧米人のことだ。
オーストラリアや南アフリカ、南米に住んでいても、ヨーロッパに出自を持っている白人ならファランに含める。
逆に欧米に住んでいて欧米の国籍を持っていても、有色人種はファランとは呼ばないのが一般的。
黒人は、ファランダム(=黒いファラン)と呼ばれている。
ロシアが微妙な立ち位置で、ファランと呼ばれることもあれば、ロシア人だとはっきりわかれば、単純に「ロシアー」と呼ばれることが多いような印象。
白人といっても、いろんな人がいるわけで、一括りにするのはどうかと思うけど、個人個人に対していちいち国籍や宗教など考えてられないんで、外見上の判断でファランとしている、といったところかな。
ファランというタイ語の語源
では、ファラン(Farang)というタイ語の語源は何か?
わたしは、ずっと、ファランセー(=フランス)が元になっていると思っていた。
その見方が変わったのが、この本。
「Lonely Planet Thai Phrasebook」
関連記事:ロンリープラネットのタイ語会話本。英語だけど、使い勝手がよくて便利。
海外旅行ガイドとして最大手のロンリープラネットが発行するタイ語会話本なのだが、そこにファランの語源について書いてあった。
手元にある本は、2008年発行の第6版。
167ページ。
以下、その要約と翻訳。
(原文は英語で、要約と翻訳の責任は当ブログ筆者にある。)
ファランとは、西洋を出自とする外国人を意味する。
その言葉の語源には諸説ある。
もっともポピュラーな説は、フランスを表す「ファランセー」が縮まったもの。
より実際的には、十字軍に参加したゲルマン系のフランク部族に関係しているというもの。
frankという言葉は、アラビア語でfaranjiという言葉を産んだ。このfaranjiといアラビア語は、ヨーロッパのキリスト教徒全般を意味しており、そのfaranjiが、ペルシャ交易ルート経由でタイに伝わって、farangとなったというもの。
タイに隣接する国でも、外国人を表す似たような単語が使われている。
カンボジアでは、西洋人のことを「barang」、ベトナムでは「pah-rang」もしくは「pah-lang-xa」と呼ぶ。
また、タイでは、ファランは「グアバ」も意味する。グアバはタイ原産ではない。(注。タイのグアバは400年以上前にポルトガル商人により伝わったもの。)
そこから、グアバを食べている西洋人(ファラン)をグアバ(ファラン)に見立てる語呂合わせが生まれたのだろう。
以上、要約と翻訳でした。
(グアバの注意書きは、Wikipedia英語版より当ブログ筆者が補足したもの。)
なるほど。
これを読むまでは、わたしも、最もポピュラーな説が正解だと思っていた。
東南アジアでいち早く植民地化政策を進めていたのがフランス。ラオスとカンボジアとベトナムはフランスの植民地となった。
タイはかろうじて植民地化を免れたが、フランスの影響を強く受けるようなった。
そんな歴史的経緯があるんで、てっきり、フランスが転化して西洋人全般のことをファランと呼ぶようになったと思っていた。
フランス→ファランセー→ファラン
が、さらに歴史をさかのぼれば、十字軍の時代のフランク部族にたどりつくわけか。
(フランスという国名も、元をたどればフランクにつながるわけで、結果的にそれほど大きく外れているわけではないが。)
Wikipediaの英語版によれば、中国ではかつて西洋人のことを、「folangji (佛郎機)」と呼んでいたようだ。
(この呼名は日本までは到達しなかったみたい。あまり詳しくはないが、日本では南蛮人とか紅毛人とか呼んでいたはず。)
果物のグアバは、タイ語で「ファラン」と呼ぶ。
グアバの外見が、禿頭の白人の姿に似ているから欧米人をファランと呼ぶようになったという説もどこかで聞いたような気がするが、これは後付の俗説ってことか。
先に欧米人としてのファランという言葉があり、欧米人が持ち込んだ果物だからグアバもファランと呼ぶようになったという解釈でいいのかな。
そのような経緯も合わせて考えると、やはり植民地時代よりもさらに遡る必要があるのは必然。
やはり、ファランの語源は、フランクで決まりのようだ。
frank→faranji(アラビア語)→farang(タイ語)
Wikipediaには、もう少し詳しい記述が載ってあるので、ご一読のほどを。グアバに関してもかなり詳しく論じてある。
ただし日本語版の「ファラン」の項目は見当たらない。
https://en.wikipedia.org/wiki/Farang
ファランのことを、イサーン語では、「バクシーダ」と呼ぶ。
この言葉の由来についても、ウィキペディアで詳細に考察してある。
まあ、ロンプラやウィキペディアの記述が絶対的に正しいわけではなかろうが、概ね合っているような気がする。
この手の情報は、英語で探さないとダメなようです。
(いや、本当はタイ語がいいんだろうけど。)
さて、以上のような考察をバービアを経営しているローカルタイ人に聞いてみたところ、反応は、「そんなこと知らん(マイルー)」というものだった。
普段はファラン相手に商売しており、とても身近な存在であるはずなのに。
ま、生活に根ざした言葉の語源なんか、普段から意識したりしないよね。それも数百年の歴史がある単語の由来なんて知ったこっちゃないよ。
日本語だって同じ。
いちいち語源なんて考えないよ。
ましてや、ボキャブラリーの半分は外来語と言われるタイ語である。語源なんか気にしていたら生活できない。
マイペンライだ。
調べてみると、いろいろと面白いんだけどね。
faranjiというペルシャ語が中国まで届いていたわけで、あと一歩で日本まで伝播していたことになる。
とすると、日本でも、ファランに近いような言葉が使われていた可能性だってある。
faranji→farang→佛郎機→??(日本語)
言葉の伝来や文化の伝播っておもしろい。
「faranjiに見るアジアでのヨーロッパ人呼称伝達の文化的背景と語彙」とでも題した学術論文があれば、読んでみたい。
まとめと蛇足(ケークについて)
というわけで、ファラン語源ペルシャ語説が最有力っぽいが、まあ別になんでもいい。
特に差別的な意味はなさそうだし、ファラン自身が、Farangと称した本をたくさん出版しているくらいだ。別に問題なかろう。
関連記事:英国紳士ファランのタイランド大冒険 FARANG!
関連記事:ファラン怒りのパタヤ。 A FARANG STRIKES BACK
直接ファランと英語で会話するときは、普通に「ヨーロピアン」とか「ウェスタナー」とか呼びますけどね。
ただ、タイ語を理解するファランと話すときは、「ファラン」を使ったりもします。タイ人もファラン相手に「ファラン」という言葉を使っていることがありますね。
やっぱり、便利なんで、ファランという言葉は。
ファランでも欧米人でも西洋人でも白人でも、臨機応変に使い分けてくださいませ。
英語のサイトをいろいろ読んでいると、一部の上流階級のタイ人は、ファランという言葉を使うのを嫌がり、タイ語で外国から来た人という意味の言葉を使うこともあるようだが、かなりレアケースらしい。
タイのテレビドラマやバラエティ番組では、普通に「ファラン」という単語を使っている。
ちなみにインド人のことをタイ語で「ケーク」という。アラブ系も含めるようだが、主にインド人。
タイ人に確かめてみると、インド人のことだと言っていた。
普通に「インディア」で通じるけど、ケークという呼び方もする。
これは、中国語の「客」から来ているそうだ。
客人といえば、西から来た商売人。インド系商人のことを、中国語にならって「客(ケーク)」と呼ぶようになったとか何とか。
これは、ファランと違って東(中国)から言葉がやってきた例となる。
やっぱり、言葉って、おもしろいね。
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