タイの入国規制が強化された。ビザランとノービザ滞在延長が厳しく対応されることになった。
今回の規制強化は政府から正式に文書で発表されているものなので、タイ政府としての本気度がうかがえる。
今年になってからのタイ入国規制強化と今回のさらなる規制強化について、少しまとめておく。
広告
タイ入国拒否される日本人たち?
今年の春頃だろうか、日本人旅行者がタイ入国に際して別室送りになったり拒否されるといった事例が多く報告されるようになった。
特にYouTube界隈で別室送りや質問攻めや陸路入国拒否からの空路入国といった内容が目立った。
タイでノービザ滞在のマックス期間である60日過ごしたあとにラオスに出国して、またタイに陸路で戻ろうとしたらビザランだとして入国審査で一悶着起きたというものだ。中には空路入国でも過去のタイ滞在歴が問題視されたケースもある。
うわあタイ入国規制が厳しくなったぞ、と一部で騒がれた形だ。
が、こんなものは当たり前すぎて論じる必要すらなかった。
パンデミック明けに外国人旅行者を多く呼び込みたかったタイ政府が少々規制を緩めていたところ、不法労働やオンライン詐欺などの問題が起きるようになり、もともとの入国規制に戻したというだけの話だからだ。
2014年にタイ入国規制が厳しくなった。いわゆるビザラン規制というやつだ。
陸路でも空路でもビザランを疑われたら、入国審査の際に、質問攻めされたり、別室送りになったり、次回からビザを取得するよう命令されたりした。
実際に個人的にも体験したことだ。
10年も前からタイでのノービザ滞在は厳しくなっていたのだ。
今年になってからのタイ入国規制強化は、強化というより、もとの状態に戻っただけのこと。
何度もノービザでタイに入国していて、さらに陸路ビザランしようとした日本人が入国拒否されそうになったと騒いでいるのは、まあそうなるよねとしか言えなかった。
頻繁にタイに来ているYouTubeやSNS投稿を見ていると、やられるのは時間の問題だとわかっていた。
それが本当に起きただけだ。
昔からタイで中長期滞在を繰り返してきたタイ好きであれば、みんなわかっていたことだろう。
ビザランがいいか悪いかではなく、そのような行為を繰り返していれば、そのうち必ず引っかかってしまうものだからだ。
ただそれだけのこと。
正式な入国規制強化
2025年11月12日にタイ入国管理局長官を議長とする緊急会議が開かれ、タイの入国管理局より正式に規制強化について発表された。
⇒https://www.immigration.go.th/?p=34106

入国管理局のFBページでも確認できる。
また、タイ政府広報からも正式告知されている。

⇒https://thailand.prd.go.th/en/content/category/detail/id/2078/iid/444048
ここまできちんと正式な文書でルールが告知されるのは珍しいかもしれない。
以下、概要。
タイ入国管理局は、外国人が観光客としてタイに入国したにもかかわらず、サイバー犯罪やグレービジネスやマネーロンダリングなどに関与するのを防ぐため、4つの措置を導入する。
規制強化措置の内容は4点。
1 母国に帰らずにビザランを繰り返し利用して、ビザ免除入国する際の審査を厳格化する。ビザランは2回までに制限する。それ以上のビザランを行った外国人は、国際空港と国境検問所の両方で入国を拒否される。
今年2025年で、ビザランを繰り返しているとみられる外国人約2900人をすでに入国拒否している。
2 詐欺行為で知られるメーソートやタークなどの国境地域の監視リストに載っている外国人の入国を防ぐ。メーソートとミャワディの国境で以前に入国拒否された外国人は、今後タイへの再入国は拒否される。
3 タイ国内各地の入国管理よくによる滞在延長審査を厳格化する。ビザラン行為が確認された場合は、延長申請を拒否するか、ビザを取り消したうえで強制送還する。
4 オーバーステイ規則に基づいて、オーバーステイする外国人の取り締まりを強化する
これらの措置により、国際空港での外国人旅行者への審査時間が少し長くなる可能性があるが、一人あたりの審査時間は45秒以内、待ち時間は40分以内とする。
発表はざっくりと以上だ。
ビザラン規制
ビザランについて、少し補足しておこう。
ここでいうビザランとは、タイ政府からの発表にあるように、タイにビザ免除措置を利用して入国したのちに、一度も母国に帰ることなく、隣国であるラオスなどに出国してから、またすぐにタイに戻って来て、再びビザ免除措置で入国しようとする行為をいう。
人によってはそれはボーダーランだろうと指摘するのだが、タイ政府がはっきりとビザランだと言っているので、そんな些末なことはどうだっていい。
とにかくビザ免除措置を利用して何度もタイに入国して、ビザなしで長期滞在する行為だと思っていればいい。
日本人はじめ、ビザ免除措置が受けられる旅行者は、タイにノービザで60日間滞在することが認められる。以前は30日間だったが、少し前から60日間に延長された。ビザ免除対象国も、中国やインドなどに大きく拡大された。
その結果といっていいのか、ビザ免除措置を利用して長期滞在する外国人が増え、また多くの犯罪行為が起こるようにもなった。
少なくともタイ政府はそう見ており、今回の規制強化なったわけだ。
ノービザ滞在が60日間。
さらに、タイ国内のイミグレーションで延長手続きをすれば、30日間の延長が認められる。
60+30=90日
1回のタイ入国で最大90日間となる。
(実際には2回目の滞在延長手続きも可能だが、期間は7日間のみ。あくまで救済措置のような位置づけなので利用者はほとんどいないはず)
1回目の90日間滞在を終えて、ラオスやマレーシアなどへ出国。それからタイに再入国すると、さらに60日間滞在可能なスタンプが押される。2回目の入国でも60日間滞在してから、イミグレーションで30日間の滞在延長手続きをすると、合計90日となる。
ビザランを一度行うと、合計180日のタイ滞在が可能というわけだ。
これがこれまでのビザランスタイル。
ただ、前述のように、今年春頃からは、このようなビザランはわりと厳し目に取り締まられるようになっている。
いや、10年前から厳しくなっている。
今回の正式文書での規制強化により、いくつかはっきりした。
まず、ビザランは2回までと明言された。
3回目からは入国拒否すると言っている。
この手の規制は、暦年単位とするため、ビザランは1年で2回までということになろう。
ビザラン認定される詳細な基準については明らかとなっていない。
たとえば、タイにノービザで40日滞在してから、ラオスやベトナムなどを一週間旅行してまたタイに戻ってきた場合でもビザランとして扱われるのか。
一度でも母国に帰国していれば、ビザラン認定されないのか。
ビザランは2回までというが、最初のタイ入国はカウントされないのか。
疑問は多い。
もともと、隣国からのタイへのノービザ陸路入国は年に2回までに制限されていた。
陸路国境を使ったノービザでのビザランは年に2回しかできなかった。
今回の新しい措置では、国際空港つまり空路入国でもビザランは入国拒否と明言してある。
とはいえ、陸路に比べて比較的緩いとはいえ、空路入国でもビザラン認定されて入国拒否や別室送りにされるケースは10年前から起きていたわけで、別に新しい規制というわけでもない。
要するに、実際のところは、10年前からのビザラン規制強化を継続しているに過ぎない。
それを今回ばかりはきっちりと施行していくと正式文書で表明したようなものだ。
むろん現場レベルでどこまで厳しく実施するかは、また別の問題で残るが。
滞在延長について
ビザラン規制については以上。
メーソートでの入国拒否については、ほとんどの日本人には無関係。
オーバーステイする外国人取りしまう強化も当たり前のことで、パンデミック前でもパンデミック中もパンデミック明けも現在も取り締まりを行っている。
ほぼ毎日にように不法滞在やオーバーステイの外国人が拘束されたなんてニュースがタイ国内では流されている。
気になるのは、3つ目の滞在延長審査の厳格化についてだ。
ビザランの項目で述べたが、タイ入国後にノービザ滞在期限の60日が終わる前に、イミグレーションオフィスで滞在延長手続きを行うことで、さらに30日間の滞在延長をすることができる。

パタヤだと、ジョムティエンにあるチョンブリイミグレーションオフィスで手続き可能だ。
あれこれと書類を用意する必要あるものの、書類さえきちんとしてれば、簡単に延長が認められる。費用は1900バーツだ。
今回の新しい措置では、滞在延長審査を厳格化して、ビザラン行為が確認された場合は、延長申請を拒否するとのこと。もしくはビザを取り消して強制送還するとも言っている。
具体的にどこまで厳しく実施するかは完全に未知数だが、これまでのように楽々と延長申請が通るわけにはいかないだろう。
ビザラン経験者は安易に延長申請はしないほうがいいかもしれない。
さて、滞在延長については、さらにルールが設けられたようだ。タイ政府からの公式文書は見つけられなかったが、英語でのタイビザ関連情報では、新しい滞在延長ルールについて述べられている。
まず、陸路でタイに入国した場合の滞在延長は不可。たとえば、ラオスからタイへ陸路入国すると、タイ国内のイミグレーションオフィスで30日の滞在延長を申請しようとしても自動的に却下されるということだ。
これは以前にはなかったルールだ。
また、同日に出入国(Out-In)した場合も延長不可。
これは空路入国でも適用されるはず。たとえば、タイを飛行機で近くのベトナムへ出国して、すぐに折り返しのフライトでタイに再入国すると、滞在延長はできないというわけだ。
陸路でのタイ入国ではそもそも滞在延長が不可。
滞在延長が可能なのは、空路で再入国した場合にかぎられるということだ。
滞在延長は2回まで認められる。
1度目は30日間。2度目は7日間。
これまでのルールと一見同じように思えるが、新しくなった規則では暦年での適用とされること。
つまり、最初に空路でタイに入国して、タイに60日間滞在して、延長手続きをすれば30日間の延長ができる。合計で最大90日間滞在したのちに、タイを出国する。たとえ間隔をあけたとしても、同年中に空路でタイに再入国して、60日間滞在してから、滞在延長手続きをしても7日間しか認められない。2回目のタイ滞在では最大で67日間ということになる。
これらのことから、1年でタイにノービザで最大滞在可能な日数は、90+67=157日ということになる。
2回目の滞在延長は認められたとしても7日間だ。あくまで救済措置的な7日延長のため、実際にはほとんど意味をなさない。
よって、最大可能な滞在日数は、150日と導かれる。
11月24日にプーケット入国管理局より声明が出されており、合計150日間の滞在は異常とみなされるとのこと。
150日を超える滞在もしくは2回以上の入国は審査が必要だとしている。
入国審査で合格しなかった外国人は、空港で入国拒否され、不法滞在が発覚した場合は逮捕され、ビザが取り消され、国外追放されてブラックリスト入りする可能性があるという。
集中的なスクリーニングを開始する基準は合計滞在日数が150日を超えることで、再入国と滞在延長の組み合わせでこの150日という上限に達した旅行者は面談を受けることになり、回答次第では国外追放の可能性もある。
プーケット空港では、今年すでに2000人の外国人が入国基準を満たさないとして国外追放されているという。
⇒https://www.thephuketnews.com/phuket-immigration-spells-out-visa-free-crackdown-98324.php
注意:滞在延長については、実際の運用については議論が分かれており、イミグレーションからの正式なルール発表も不明のため、この通りではない可能性あり。
かなり流動的な状況だ。
短期旅行者への影響は?
なんだか厳しくなったような気がして、自分は大丈夫だろうかと気に病むタイ好き旅行者もいると思う。
でも、大丈夫だ。
1回の滞在がせいぜい一週間程度のごく普通の短期旅行者にはまったく問題なし。
リピーターであっても、年の3,4回のタイ短期旅行で問題になることはほぼありえない。合計すれば一年でせいぜい30日や40日程度だ。
ノービザでのタイ入国が年に2回までに制限されると勘違いする人は以前から多かった。でもそんなことはない。
昔も今も、短期の観光旅行であれば3回以上のノービザ入国でも問題ない。
ただし、すべては入国審査官の裁量に委ねられている。
今回は短期旅行での入国であっても、以前にビザランのようなノービザ長期滞在をしていた経歴があれば、ちょっと問題になるかもしれない。
ごくごく一般的な短期旅行者は特に何も心配はいらない。
いくつか注意点だけを。
2025年5月からは、タイデジタル到着カード(TDAC)の運用が始まった。
外国人は全員登録必須だ。
タイ入国前には必ず登録しておくこと。
短期旅行者であれば、帰国チケットも購入済みのはずだから、正しくタイ出国日も記入しておき、フライト番号も記入しておこう。
帰国航空券のEチケットを印刷しておくか、スマホで提示できるようにしておくといい。
プーケット移民局によれば、偽造もしくは未払いの航空券が急増しているとのことだ。帰国予定だと見せかけるために作成されたものとしている。偽造もしくは未払いの航空券だと発覚した場合は、即座に国外追放されるという。
また、タイ滞在中のホテル予約バウチャーもあると安心だ。
さらには、旅行期間中に必要とみなされる現金もしくはクレジットカードも見せられるようにしておくこと。
とはいえ、日本人旅行者が、帰国航空券やホテルバウチャーや現金を見せろと言われることはほとんどないだろう。
あくまで念の為という意味だ。
個人的な経験でも、これまで入国審査の際になにかを指示されたのは、タイ南部で陸路入国する際に現金1万バーツ相当の現金を提示してくれと言われたことがあるだけ。
繰り返しになるが、ごくごく普通の短期旅行者には、今回の規制強化は影響はない。
まとめ
ビザランは2回まで。というか、ノービザでの60日間滞在は年2回までと考えればいいだろう。
ノービザ入国時の滞在延長は年2回までだが、実質的には1回まで。
1年最大で滞在日数150日あたりが限界。それより短くてもビザラン認定される可能性もある。
今回の規制強化措置は内容がある程度は文書化された。
でも実際の運用については未知数だ。
入国審査官の裁量次第の部分はまだまだ多く残されている。
タイ入国については、SNSやブログやYoutubeなどで多く語られていると思う。
一ついえることは、すべての情報を鵜呑みにしないこと。はっきりいって、イミグレーション内部のことなんて外部の人間が知りようがない。
正解はわからない。
ビザランは犯罪だ、いや合法だとか、入国拒否されたとか、何度もノービザ入国を繰り返して長期滞在しているけどまったく問題ないかと、いろんな内容の投稿を目にしても、すべて信じないこと。
もちろんこの記事も信用してはいけない。
なにかあったら自分で対処するしかない。
個人的にもタイ入国には数え切れないほど苦労してきた。
いえることは、タイで長期滞在したいなら、適切なビザを取れということだ。
あと、何度も言うようですが、短期旅行者は心配無用です。ケースバイケースなので、入国審査で引っかかる可能性は絶対に0にはならないけれど、圧倒的大多数の短期旅行者には関係ない話です。
広告