沈没日記35
前夜、まさかの再会を果たし、そのままお持ち帰りしたカラオケ嬢。
眠りについたのは深夜3時頃。
わたしは午前10時過ぎには起床した。
もちろん、カラオケ嬢が目を覚ます気配は微塵もない。
さあ、どこまで寝続けるのか。
刮目しながら、カラオケ嬢の目覚めを待つ。
部屋の電気をつけると怒られるので、こっそりとPC作業したりコーヒー飲んだりしながら、眠り姫の目覚めを今か今かと注視。
たまに彼女の横にもぐりこんで唇を奪ってみるものの、彼女はただ「う~ん」と唸り声をもらすだけで、目を覚ます気配は一向にない。
あまりしつこむからむと、そっぽを向いて人形に抱きついてしまう。
ようやく午後2時頃、カラオケ嬢がむくりと起きてきた。
何とも機嫌の悪そうな表情である。
触らぬ神に祟りなし。目覚めのカラオケ嬢はそっとしておくべし。
やさしく「ヒューカオマイ(おなかすいた)?」と尋ねる。
返事はもちろん、大声の「ヒューカオ!」だ。
やあやあ、これぞカラオケ嬢ですな。
さて、何を買ってきましょうか?
食堂のおばさんのところでカオムートート(揚げ豚肉のせごはん)を買ってこいとの指令。
もちろん、仰せのとおりに。
第一、わたしも腹減ったよ。
急いで、おばさんのところへ。
店には、カラオケ嬢の友人がいた。
わたしも旧知の間柄。昨晩の宴会には参加していなかったので、久しぶりの再会となる。
韓国人の客を何人も転がしていて、常に誰かしらビデオコールしているやり手の彼女。韓国語もぺらぺら。
久しぶりの再会だが、彼女もまったく変わっていない。わたしとの挨拶もそこそこ、韓国語でビデオコールを始めていた。
バンコクでは日本語を話す夜嬢なんていくらでもいるだろうけど、パタヤではむしろ韓国語を話すカラオケ嬢のほうが多いんじゃなかろうか。移転した韓国カラオケのモナリザの巨大さを見ると、さもありなん。
と、料理ができたようだ。おばさんがわたしを呼んでいる。
料理二皿と水2本で計100バーツ。安上がりで助かります。
急いで、カラオケ嬢の元へ戻る。
二度寝しているカラオケ嬢を叩き起こして、昼食開始。
わたしは、ガパオプラームック(イカのガパオ)にした。
うーん、この感じ、ひさしぶりだなあ。
アンニュイな昼下がりに、キーキアット(面倒くさがり)なタイガールと食べるアーハンタイ(タイ料理)。
これぞ、タイの女遊びだ。
生あくびを繰り返すカラオケ嬢。
11時間ほど寝続けても、まだ寝たりないらしい。
「マイポー(充分じゃない)」としきりにぼやいている。
食べ終わると、彼女はまたしてもベッドにもぐりこんだ。
人形を抱きかかえて、三度寝の開始。
いやいや、せめてわたしに抱きついてくれよ。
夕方になり、ようやく睡眠終了。
なんだかブンブンするような雰囲気でもなく、彼女はシャワーを浴びて、着替え始めた。
これから知り合いのパーティがあるんで出かけるそうな。
帰り際のセリフはもちろん「コータンノイ(おかねちょうだい)」である。
はいはい。お小遣いね。
1000バーツ進呈。
飲み過ぎるんじゃないぞ、と送り出す。
あとで電話するからと言い残してカラオケ嬢は出て行った。
たぶん、夜遅くなってからカラオケ嬢が部屋に泊まりに来るだろう。
この繰り返しだ。
ああ、またこの日々が始まるのかな。