55日目
朝のブンブン
パタヤ滞在は残り3日。
いよいよ、終わりが近づいてきた。
昨晩はカラオケ嬢が部屋に来ず、一人寝となった。
ベッドが広いし、気兼ねなく眠ることができる。
が、目覚めは快適とはいかなかった。
朝一番で、カラオケ嬢が電話をかけてきたのだ。
時計をみると、まだ朝の8時だよ。
これからわたしの部屋に来るという。
おいおい、それなら昨日泊まりに来ればよかったのに。
すぐに、わたしのレンタルバイクに乗って、彼女が登場。
まあ、彼女のアパートまで迎えに行くことを思えば楽なものか。
バイクが無事でよかった。
シャワー借りるねと彼女が浴室へ。
バスタオル姿一枚でベッドに寝転がる。
これは誘っているのか。しょうがない。わたしもシャワーへ。
で、朝っぱらから一発。
む、昨日貸したカネをさっそく返しにきたわけね。そうなのね。
なんかうまく利用されているような気もするが、お互いそれで納得しているんで別に問題ないか。
第一、気持ちいい。
いや、ほんと気持ちよかった。
タンブンデートのすすめ
それにしても、こんな午前中の時間帯から二人とも起きているなんて珍しいこと。
外を見ると、いい天気だ。
ちょっと出かけたくなった。
そういえば、カラオケ嬢がタンブンに行きたいと前から言っていたな。
タンブンとは、タイ語で「徳を積む」といった意味になるのかな。功徳を施す。まあ、徳を積む行為の形態はいろいろあるだろうけど、普通はお寺へ行ってお坊さんに寄進する行為を指すことが多い。
蛇足ながら、洋書を読んでいると、タンブンのことを英語では「make merit」という訳を当てている。メリットには功徳という意味があるんで、ほぼ直訳。
よし、タンブンに行こう。
ブンブンのあとは、タンブンである。
ダジャレではない。
これは、タイ夜遊びの黄金パターンの一つだ。
ロングでペイバーしてから、その翌日にタンブンへ連れて行かれた人も少なくないんじゃないでしょうかね。
わたしは、まだタイ初心者だった頃に、バンコクのナナ・プラザでペイバーしたゴーゴー嬢に連れて行かれたのが最初。たしかロリポップのダンサーだったかな。
タクシーに乗って、バンコク市内のどこかは不明だが、中華系のお寺へ移動した。
漢字で名前とか書き込んで、お布施を入れた封筒をお供えしたような覚えがある。よくわからないまま500バーツ包んだっけ。
ゴーゴー嬢ももちろん自腹で500バーツお供えしていた。
いったい、あれはどこの寺だったんだろう。いまだにわからない。
それが初めてのタンブン経験。
それからは、タンブンに誘われることもあれば、こちらから誘うこともあった。
熱心なタンブン好きタイ人が多いんで、タンブンに行こうと誘えば、断られることは少ない。
ひょいひょいと一緒に行ってくれる。
ペイバー経験もないのに、一緒にタンブンデートした女性も何人かいる。
うまくいくかはともかく、ちょっと仲が深まることは確か。ちょっとだけね。
どうせ日中することもなく暇なら、タンブンデートに誘ってみましょう。
パタヤの寺(ワット)といえば、パタヤタイにあるワットチャイモンコンである。
これはお約束。
プラトゥムナムの丘にあるブッグブッダ(ワットプラヤーイ)まで行くのも良し。
昔、スーパーベイビーのゴーゴー嬢に連れて行かれたなあ。懐かしい。
ここはバイクがないと厳しい。というか無理。
あとはソンテウをチャーターするか。パタヤ中心部からチャーターすると、タイ人価格では150バーツ、とバービアのママさんが言っていた。帰りは、丘を少し降りたところにタクシー乗り場があるそうだ。
今回はレンタルバイクがあるとはいえ、あの山を登るのは面倒臭い。しかも暑いし。
というわけで、パタヤタイにあるワットチャイモンコンへ。通称「ワットチャイ」。タイ人にはワットチャイで通じる。
ワットチャイモンコンでタンブン
入口付近にバイクをとめる。昼間にタンブンに来るだけならバイクは無料。車は有料。
なんと、カラオケ嬢は初めて来たらしい。
パタヤに来てすでに数ヶ月らしいけど、珍しいな。まあ、普段は寝ているだけの生活だと外には出かけないのかね。
まずは、境内を少し散歩。
ほとんど人がいない。平日の真っ昼間だし、こんなものかな。しかも、今日は暑い。とにかく暑い。
カラオケ嬢は、少し歩いただけで、大玉の汗を顔中に浮かべていた。
これだけ汗をかくタイ女性は初めて見たかも。太っていれば汗かきなのもわからないではないが、カラオケ嬢はとてもスリム。
いや、大飯喰らいなのに痩せているのは、この活発な新陳代謝に関係がありそうだ。
お寺の本堂までわたしが案内する。
あとは、カラオケ嬢の先導でタンブン開始。
タンブンの流れはこんな感じ。
寄進は、一人100バーツずつ。もちろん額面はそれぞれの自由で。
お金を封筒に入れて、ドネーションボックスへ。
あとは、脇に置いてあるお供え品と水差しを持って、僧侶の前へ。
お経と説法を聞いて、お清めの水をかけてもらう。
お供え品を渡して、深々とワイしてから一度、本堂を出る。
外の植木に、水差しの水をかける。
また本堂に戻って、仏像の前でお線香をお供え。
紙包みの中にある金箔を、小さな仏像にはりつける。
これでタンブンは終了。
基本的にタイ人の横に付き添っていれば問題なし。
多少違いはあるけど、仏教になじみ深い日本人なら特に違和感なく進められるでしょう。
わたしたちのあとには、タイ女性に連れられた若いファランもタンブンに来ていた。
ワイがさまになっていたから、タイに長いのかもしれない。
これにてワットチャイでのお参りはおしまい。
他に参拝客がいなかったから早かった。15分もかからなかった。
それにしても、熱心にタンブンするタイ女性の顔と雰囲気って、何かいいよね。
普段は見ることのない神妙な面持ちで、この時ばかりは、たとえ夜の女性であっても、夜の雰囲気は一切なくなって、素の顔が垣間見える。
さて、カラオケ嬢が何を祈願したのか、わたしには知る由もない。
やっぱりわたしのことなんかより、家族の安寧なんでしょうかね。
ラートナー
ワットチャイをあとにして、一度、カラオケ嬢のアパートへ戻る。
彼女が着替えをしてから、軽く食事。
二人ともラートナーにした。
あんかけ麺のことだ。
乾麺がなかったので、普通の米麺となった。
ちなみに、カラオケ嬢仕様のラートナーはこちら。
赤黒いスープとなっている。唐辛子入れすぎでしょ。同じ料理とは思えない色の違いだ。
やはり、ラートナーは腹にずしりと来る。
ラートナーにもいろいろなタイプがあるが、わたしは完食できた覚えがない。
で、わたしの残した分は、カラオケ嬢が平らげていた。
体重40キロ台の女子にも負ける食欲。我ながら少食だ。
おっと、カラオケ嬢は勝手にビールを飲んでいる。
こらあ、誰が支払うと思っているんだ。
ラートナー2杯とビール1本と水で140バーツ。ま、喜んで払いますけどね。
二人でわたしの部屋へ戻って、だらだら過ごす。
日没後、カラオケ嬢は仕事へ。
今日はわたしがバイクを使いたいんで、バイタクで出勤してもらうことにする。
帰り際、カラオケ嬢へお小遣い100バーツ。
今夜はちゃんと帰ってくるんだぞ。
(つづく)