パタヤ千夜一夜

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30年前のタイと今のタイ。『12万円で世界を歩くリターンズ』

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下川裕治が新刊を出していた。
今作は、下川裕治のデビュー作というべき『12万円で世界を歩く』の30年後バージョン。
30年前に12万円の予算で旅したルートを今一度たどろうという企画だ。
30年の間に世界はどう変わったのか、旅行の姿はどう変わったのか。
題して『12万円で世界を歩くリターンズ』

12万円で世界を歩くリターンズ タイ・北極圏・長江・サハリン編

大元の『12万円で世界を歩く』は1巻ものだったが、リターンズは複数巻に分かれて出版されている。
今回紹介するのは、『タイ・北極圏・長江・サハリン編』となる。

さて、『12万円で世界を歩く』が1年間にわたり雑誌に連載され、最初に本になったのが1990年のこと。
わたしが持っている『12万円で世界を歩く』はのちに文庫化されたもの。
1997年の出版だ。
ちょうどわたしが初めてタイを訪れた年でもあり、本格的にバックパッカーを始めた年となる。
とはいえ、バックパッカーを始める前にこの『12万円で世界を歩く』を読んでいたわけでもなくて、後追いで下川裕治を知った。

海外放浪やバックパッカー旅行に漠然たる憧憬を抱いていたが、沢木耕太郎や下川裕治の影響はまったく受けていない。なぜか自然と海外を旅するようになった。
旅行に必要と思ってガイドブックの類は購入していたが、紀行記や旅行エッセイの類はあまり読んでいなかった。
自分で体験すればいいやという考えだったのかもしれない。
その後、一時期海外旅行から遠ざかっている間は、海外旅行本をたくさん読むようになった。
再び海外旅行を繰り返すようになっても旅行本読書は継続。とりわけタイ関係の本を良く読むようになり、下川裕治の著作も数多く集めた。

あれから30年後のタイ

『12万円で世界を歩く』出版から30年経った。

同じルートとたどるという企画で下川裕治がまた旅に出た。
今作は『12万円で世界を歩くリターンズ タイ・北極圏・長江・サハリン編』である。

このブログ記事で取り上げるのは、タイのみ。
あとの章もおもしろいので読んでほしいが、とりあえずタイで。

バンコクをスタートして、まずメコン川沿いに移動。
30年前は越えられなかったラオスとの国境を簡単に渡るようになっている。
メコン川には橋がかかっていてバスでさくっと越えられるのだ。
ちなみにわたしが初めてラオスに行ったのが2000年のこと。20年前だが、その当時はまだラオス入国にはビザが必要で、わりと面倒くさかったおぼえがある。その後日本人はノービザでラオス入国できるようになった。

12万円の旅は駆け足ですすんでいく。
ウドンタニーやらコンケーンやらチェンマイやら、とにかくすごいスピードで移動していく。
街の観光なんて目もくれない。
駆け足の旅となっている。
歩くというより走る。

交通機関の発達により、時間のロスなく移動ができるようになったのだ。

長距離移動は大型バスが基本、その隙間を埋めるようロットゥーが隈なく走り、さらにローカルエリアにはソンテウが細かく客を拾っていく。
20年前、30年前との違いは、長距離バスがシステマティックに運行されるようになり、さらにロットゥーが増えたことだろう。
これにより、無駄のない移動ができるようになった。

20年前においても、一番効率のいい移動方法は、旅行会社が運行するツーリストバスだったように思う。カオサンあたりの旅行会社がまるごとパッケージで売り出していた。途中の細かい移動を考えず済むので一番効率が良かった。

が、今ではそんなパッケージツアーも不要となった。
普通にローカル向け移動手段を使うだけで、さくさくと進むようになった。
昔はそうはいかなかった。
バスがなくなればおしまい。街で足止めを食らう。
それも旅の醍醐味であったが、予算が限られていると一晩の宿泊費も惜しくなる。

よって、貧乏性な旅人は先を急ぐのだ。
なまじ効率よく移動できるものだから、まるで止まったら死ぬかのように移動を続けるはめになる。
それが下川流貧乏旅行スタイル。
移動に次ぐ移動で、得意のぼやきも連発する。
でも止まらない、やめられない。

コンケーンのバスターミナルがいつの間にか郊外に移転していたと気づく。
確かに数年前に移転しているのをわたしも体験した。

以前だったら、郊外のバスターミナルに降ろされると移動が大変だった。
郊外のターミナル近くにはホテルもない。
なんとも探したホテルが、日本のビジネスホテルそっくりでげんなりとする下川裕治。
これでは日本と変わらないではないか。
そして翌朝ホテルからバスターミナルへ移動しようと思っても、近所にはタクシーの一台も止まっていない。
ホテルで手配すると高いし交渉もできない。タイのタクシーやトゥクトゥクと言えば交渉して乗るもの。でもホテル側に手配すると言い値となってしまう。
しかたなくGrabを利用してみると、安い価格であっさりとタクシーがやってくる。はじめから交渉など要らない。

楽だけど、なんか違う。
思っていた旅の姿ではない。
またぼやく著者。

気持ちはよくわかる。
本当によくわかる。
23年に初めてタイを訪れた時はカオサンの1泊100バーツのゲストハウスに泊まっていたものだ。
今これを書いているのはタイ・パタヤの快適なコンドミニアムの部屋である。
移動はもっぱら自分のバイク。ちょっと遠出する時はGrabを使う。
長距離バスのチケットも事前予約できるし、そもそも長距離移動はLCCでさくっと飛んでしまう。
もはや移動の苦しみというのはタイでは味わえなくなってきた。

移動の苦しみを味わうのが海外貧乏旅行ともいえた。
なぜにこんなしんどい思いをしてまで移動するのだと悔恨しながらも先へ先へと進んでいく。
12時間もバスに揺られたあと、また10時間バスに乗るとかざらだった。
インドでは来る予定の列車が半日遅れて、それからようやく寝台車に乗車したら、自分の寝台席にはインド人が占拠していて、車掌に告げてようやくインド人を排除したら、今度は厚かましくもベッドの足元に座らせてくれとお願いされて辟易もした。しかもそのインド人男には妻と小さな子供がいたが、その二人には立たせたままで男一人が座ろうとしていたのだ。疲れる。
ヨーロッパでは4日連続で夜行バスと夜行列車に乗ったこともある。
苦しかった。
でも旅が終わってみれば、その苦しみが楽しく思えてしまう。
そしてまた旅に出る。

けれども時代が変わり、今では移動の苦しみから解放されるようになった。
一度楽を覚えてしまうと、もう後戻りはできない。
現実に楽に移動できる手段が目の前にあるのに、それを使わない手はない。

いくら仕事とはいえ、60歳を越えてなおこのような貧乏旅を続けられる著者を尊敬する。
今のわたしにはちょっと真似できない。
でも、変な勇気はもらった。
また昔のような貧乏バックパッカー旅行をやってみたいという気持ちがふつふつと湧いてくる。
たぶんやらないけど。

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タイ旅行は安くなった

各章の最後には、旅に使った明細書が掲載されている。
30年前とほぼ同じコースをたどると、どれほど利用金額に違いが出るのか一目瞭然。

あくまで移動をメインに考えると、日本からタイへ旅行するには、30年前よりも今のほうが安く上がる。

12万円で世界を歩くの企画は、日本からの往復航空券の値段も含まれている。
航空券が安くなれば、それだけ現地で使える金額も増えることになる。
この航空券がとにかく安くなったのだ。

わたし個人が最初にタイを訪れたのが1997年のこと。
23年前になるが、たしかにその当時は飛行機代は高かった。安い経由便を探したりと、なかなか大変な作業だった。
直行便だと7,8万くらいしたようなおぼえがある。安くて6万とか。東京発だとビーマンバングラデシュ航空が貧乏旅行の定番だった。
それが今はLCCでひょいと行けてしまう(むろん現在は渡航不可だが)。
安いプロモーションがあれば往復2万円である。

LCCを使って航空券代を安くすれば、その分タイ国内で使える予算が増える。
しかも国内移動もスムーズにできて無駄がなくなり、ルート走破に必要な日数が少なくなり宿泊代も浮く。

30年の前のクイティアオが1杯15バーツ。現在は40から50バーツほど。
ローカル向け食べ物価格は3倍ほどになっている。
タイの物価は確実に上がっている。
でも、旅行代は安くなっているという不思議な現象が起こる。
詳しくは本編を読んで確かめてほしいが、同じルートをたどる旅行をするだけなら、実に半分近い費用で達成できてしまう。

現地で観光したり、高級ホテルに止まったり、豪勢な食事をしたり、夜遊びしたりすれば、確実に30年前より高くつくが、普通にローカル交通機関で移動を続ける旅ならば30年前より安い。それも圧倒的に安くなる。
実におもしろい現象が起きている。

アマゾンではKindle版も出ている。わたしはタイにいるので、むろんKindle版で読んだ。

まとめ

まあ、30年前だろうが23年前だろうが昔は昔。
今は今。
圧倒的に安くなったタイ旅行。
旅の風情も失われつつあるのだろうが旅行に変わりはない。タイも変わっているが、まだまだ変わらない部分も多い。
それはそれだ。
今を楽しむしかない。

とはいえ、たった今現在はタイ旅行も海外旅行も不可能な状況。
この先、海外旅行自体が大きく様変わりしていく可能性も充分ある。

30年前のタイを知っている人も、最近のタイしか知らない人も、下川裕治の目線とぼやきを通じて、タイにおける時間の流れを追体験してみてほしい。
そして自分でいろいろ思い巡らすのがいい。
それが読書を通じた旅だと思う。

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