「ANGELS OF PATTAYA」by G.T.Gray
これはファランによるタイ売春婦たちへのインタビュー集だ。
タイトルはパタヤの天使たちと謳っているが、取りあげている女性たちの仕事場はバンコクが多い。もちろん、パタヤのバービア嬢やゴーゴーダンサーも登場する。
取り上げられる女性たちの業種は、MP、ゴーゴーバー、バービア、カフェ、フリーランサーなどなど。外国人旅行者が訪れるようなスポットがほとんど。
業種が違えども、そこはタイの風俗業のこと、どうしても似たような内容のインタビューになってしまうのは、致し方ないところか。
地方出身、貧乏、子持ち、家族に送金……
毎月どれくらい稼げるのか?
見知らぬ外国人と一夜を過ごすのに抵抗はないのか?
エイズは怖くないのか?
これからどうするのか?
などといった定番の質問事項が多い。
副題もついており、「Inside the secret world of Thai prostitution(タイ売春の秘密の世界の内幕)」。
たいそうな副題だが、熱心なタイリピーターなら、ほとんど既知の内容ばかりだろう。
ちっとも秘密なんか暴露していないぞ。
まあ、細かい収入の話なんかは、けっこう興味深いけど。
一例をあげてみよう。
とあるディスコで金持ちファラン旅行者をターゲットにする33歳のフリーランサー。
18歳の時にバンコクの大学へ進学したものの金持ちタイ人の愛人となり大学をやめてしまう。
その一年後に金持ちフランス人と結婚して子どもを作ったが離婚。男はフランスへ帰っていった。
その後、南アフリカ人の恋人ができて、南アフリカへ。
また別れて、今度はドイツ人経営者とつきあい、ヨーロッパへ渡る。
タイが恋しくなり帰国。
ドイツ人からの支援でビジネスを始めるも売却。
現在はディスコで金持ちファランをひっかける生活。
英語もドイツ語もぺらぺら。
でもオフィスで働く気はさらさらないと言う。
だって、ディスコで知り合う外国人から一晩で稼げる額が5000バーツか6000バーツ。
月収で6万バーツ以上。
さらに貢物も多数。
働く必要なしと豪語する彼女。
将来の見通しについて聞かれるも、あっけらかんと答える彼女。
「心配してないわ。新しいビジネスでも始めるか、金持ちファランと結婚するから」
むう。実に楽天的ですばらしい。33歳のタイ女性でもファランから見れば、かなり若く見えるようだ。
で、彼女には、金持ち旅行者を見抜く方法があるそうな。
まず、男が身につけている服装と時計をチェックする。
「カネを使おうとする男は安っぽい時計を買ったりしないから」とのことだ。
なるほどね。
モテナイ男は、これ見よがしに高級腕時計をしていけば、女性からの食いつきが良くなりそうだ。
まあ、逆にカモ認定されるのがオチかもしれないけど。
あと、プノンペンに出稼ぎに来ているベトナム女性のインタビューが珍しい。
まあ、それでもやはり貧乏ネタとなってしまう。
いつか金持ちの男が現れて、この苦しい状況から連れて出してくれると信じて働き続ける女性たちなのである。
ラストは、元アメリカ海兵隊員で今はパタヤでバービアを経営している男へのインタビュー。ある意味、これが一番おもしろいかも。
1961年に保養でパタヤを訪れたのが最初。当時はバンコクからパタヤへの道は未舗装で、トラックで3時間かかった。またパタヤはのどかな漁村で何もなかった、とのこと。
その後いろいろあって、現在はパタヤのバービアオーナー。
バービアを経営しようかと考えている人への忠告があり、最後はパタヤへ遊びに来ようとする人へのメッセージで締めくくられる。
「パタヤにいる女たちは、不幸な人生を強いられてきて、自分や家族のことをちょっとでも良くしようと働いているんだ。ああ、ここに遊びに来れば、楽しめるさ、すごくね。これは言っておこう、女たちをまっとうに扱ってあげろとね。でも、女たちの現実のために自分の楽しみを逃さないことだ。忘れるな、このゲームでは女たちのほうが君より一枚も二枚も上手だってことをな」
夜の女性たちの不幸話に共感しすぎるなってことか。
パタヤは単純にバカになって楽しむところ。
現実を知りすぎてしまっても、いいことなんか何一つないのかもね。
まとめ
正直、同じようなインタビューが続くので、内容的にはあまりおすすめできない。
ただ、簡単な会話文中心で、地の文も平易な英語で書かれており、とても読みやすい。ほとんど辞書要らずだ。
MPの説明で、「fish-bowl」と書かれていても、すぐに「金魚鉢」のことだと想像できる。
英語の勉強に向いてることは確か。
これから洋書を読んで英語の勉強をしてみようと思っている真面目かつ不埒なタイ外道者には最適かも。
お暇な時間にどうぞ。
わたしがタイ国内の本屋で購入した時は460バーツ。
キンドル版もあり。