MANGO RAINS by Daniel M.Dorothy
パタヤ地元英字新聞「PATTAYA MAIL」の編集者ダニエル・ドロシーが実話を元に書き下ろした小説。
簡単なあらすじ
親戚にだまされ売春宿に売り飛ばされたイサーンの少女。
妊娠して娘を産む。バンコクに流れつき、女手一つで育てるも、信じていた友人に騙され、赤子を売り飛ばされてしまう。
それから母の必死の捜索がはじまる。
パッポンからパタヤへ。パタヤからイサーンへ。イサーンからバンコクへ。まさに執念の大捜索。
と同時に母は歌手としての道を歩む。そして大スターへ。
だがいくら調べても娘は見つからない。そして、20年が過ぎて、ついに・・・
著者が実在のモデルから話を直接きいて書き上げたそうだ。
母の人生も波乱万丈だが、娘の流転の人生もすごい。
まずパッポンで物乞いをやらされる。
それから親切なトゥクトゥクドライバーに助けられパタヤの孤児院へ。
数年ほど孤児院で育つが、誘拐され、別の組織にバンコクで物乞いを強要される。
仲間とともに脱出してイサーンにある仲間の実家へ逃げこむ。
そこにいられなくなりバンコクへ戻る。パッポンのゴーゴーで働く。
今度はタイの地方都市でバスの乗務員。そこで平穏に暮らしていると、事件に巻きこまれ逃走を余儀なくされる。
といった具合。
ラスト間近のシーンがいい。
人気歌手となった母は、我が娘の名前を冠したオリジナル曲をつくり、大ヒット。ラジオやテレビで盛大に流れる。当の娘はまさか自分のことを歌っているとは知る由もなく、歌を口ずさむ。
そんな母娘の再会シーンにはただただ感動。
だが、長い、ひたすら長い。
大きいサイズのペイパーバックで450ページ。日本語の文庫本なら600ページ越えだろう。
文章は簡潔で読みやすい。プロのライターだけはある。それほど難しい英語じゃないけど、とにかく読むのに時間がかかった。
でもいい話だ。お涙頂戴ものなのはわかりきっているが、単純に泣ける。
パッポンやソイカウボーイで物乞いをする子どもたちとそれを操る大人たち。タイ北部山岳地帯やイサーンでの人身売買の実態。タイの風俗裏事情。
そんなアジアのダークサイドも知ることができる。
おすすめの一冊だ。
キンドル版も出版された。ペイパーバック版より安い。
偶然だろうが、ほぼ同タイトルの馳星周の小説もある。こちらもタイが舞台。あわせて一読あれ。
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