(沈没日記後日譚)
パタヤ沈没後半戦でずっと一緒だったカラオケ嬢。
わたしが帰国後、カラオケ嬢からビデオ通話がかかってくるようになった。
これはお約束。
会話の内容は、「タムアライ(何している?)」とか「ギンカオルーヤン(ご飯食べた?)」とか「キットゥン」とか他愛のないものである。これまたお約束。
で、そんな他愛もないやり取りを数回した後、またビデオ通話がかかってきた。
開口一番、
「ハロー コータンノイ」
コー○○ノイ=○○をください
タン=お金
つまり、「お金ちょうだい」
はやっ!
まだパタヤから日本に帰ってきて、一週間も経っていないぞ。
しかも、ビデオ通話かけてきて、第一声がそれかよ。
テキトウに愛想笑いでごまかしていると、カラオケ嬢が大声を張り上げる。
「タンモッレオ。マイミータン、ギンビアメダイ(お金なくなった。お金ないからビール飲めないよ)!」
いやいや、あなた、ビール瓶を片手にそんなこと言ったって説得力ゼロですから。
さらにグビッとビールをあおるカラオケ嬢。
「ソーンングンノイ」とも言っているなあ。
そのまんま、「お金送ってね」という意味だ。
お約束の送金以来だけど、ちょっと今回は早いな。
せめて1ヶ月は我慢してほしい。
半分冗談みたいな口調だったけど、意外と本気だろうなあ。
イサーンの田舎からパタヤへ来たのは、遊びではなくて、カネを稼ぐためだ。
金払いの悪い外国人と付き合っている余裕はない。
わたしの次回のパタヤ訪問は、少なくとも1ヶ月以上は先となる。
「待っててね」と伝えているものの、彼女は「ナーンマーク(すごく長いよ)」とご立腹。
この調子なら、他の男(=太客)を作って、またバイバイとなりそう。
前回のコヨーテさんの二の舞か。
やっぱり、単純に客と嬢の関係のほうが楽なんだろうね。
ペイバーして一晩をともに過ごすだけ。翌朝バイバイ。
気が向いた時だけ、お店に行ってまたペイバーする。
なんの後腐れもない不健全かつ健全な関係。
そんなシンプルな関係なら、送金がどうのこうの、あとで気を揉む心配もなし。
1回か2回ペイバーしただけで高い買い物をおねだりしてきたり送金依頼してくる女性もいるが、そんなものは切ってしまえばいいだけ。LINEは即ブロックだ。
が、関係が深くなり情が湧いてからの送金依頼やおねだりは、やっぱり考えさせられてしまうもの。
貸付金(=ブンブン代の前倒し)という名目で送金してしまおうか。次回は安く遊べるぞ。
いやいや、そんなことしても無意味だな。
カネは現地で一緒に過ごす間だけ使うべし。
送金してもいいことなんかないよ、多分。
いや、でも、本当にカネに困っているかもしれないぞ。
1万バーツは無理でも、5000バーツ、いや3000バーツなら…
今回だけは特別に…
これであの子が助かるのなら…
ま、送りませんけどね。
それにしても、送金依頼理由が「ビール代がなくなったから」というのがカラオケ嬢っぽくていいよね。
その次の日もまたビデオ通話がかかってきた。
ご飯を食べながら、「ソムタムも食べたい。でもお金ない。お金送って~」というものだった。
家賃が払えない、弟が交通事故、親戚が亡くなった、整形手術したい、といった定番の理由じゃないところがおもしろい。
ビール代とソムタム代くらいなら、送ってもいいような気がしてしまう。
いかんいかん。すっかり罠にハマっているぞ。
とりあえず、あと一ヶ月くらいは待っててくれないかなあ。