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千夜一夜ライブラリー

ミャンマー陸路移動は可能なのか?下川裕治「裏国境突破 東南アジア一周大作戦」

投稿日:2015年5月1日 更新日:


アジア旅行記界のゴッドファザー、下川裕治の新作が出た。
今回は、下川先生の大得意分野、貧乏バス旅行による東南アジア一周旅行に挑戦している。
東南アジア好きとしては読まずにはいられない。

下川裕治『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』
下川裕治裏国境 001

 

さて、わたしがバックパッカーをやっていた90年代から、陸路による東南アジア大周遊旅行は夢の話だった。
というのも、現実問題として、ミャンマーの陸路踏破が不可能だったから。
タチレクなどからは陸路での入国が可能。でも、その先へはあまりすすめない。途中の町までだ。それ以上は、外国人は追い返されてしまう。

2012年にわたしも実際にタチレクを訪れているが、日帰りですごすごとメーサイに戻ってきている。

関連記事:メーサイとタチレク

古い話だが、電波少年での猿岩石の「ユーラシア大陸ヒッチハイク横断」企画で、猿岩石の二人が飛行機に乗ったことが発覚したのも、不可能であるはずのミャンマー陸路通過をしたかのような編集と演出がなされていたからだ。

そんなわけで、旅人たちの間では、ずっと幻とされてきたミャンマー陸路踏破。

が、2013年に、ミャンマーの規則がかわったのか、陸路でも移動できるというニュースが出てきた。
わたしも耳にしていて、かなり気になっていた。
これが本当なら、タチレクから入って、ヤンゴンまで陸路で行けるのではないか。

それはすなわち、陸路での東南アジア大周遊旅行が可能となることを意味する。

果たして本当なのか?

それを下川先生は本書で試している。
ミャンマー陸路通過による東南アジア一周だ。

それも、単に陸路で東南アジアを一筆書きのように一周するだけでなく、一般的なバックパッカーが利用しないような辺鄙な国境を通過して、周遊旅行しようというものだ。

バンコクを出発して、カンボジア、ベトナム、ラオスへ進んでいく。

その国境の名前はこんな感じ。

チョンチョム
オスマック
チャドック
ディエンビエンフー
ムアンクア
ホンサー
ムアンガン

ほら、よっぽどの国境マニアでもない限り、知らないような地名ばかり。

タイ・カンボジア国境で有名なのはアランヤとポイペトだが、そんなところは通らない。
スリン郊外のチョンチョムから林の中にあるようなカンボジア国境を通過、いや、まさに突破していくのだ。

いやあ、おもしろい。
トラブルがありつつも次々と国境を突破していき、最後の関門へ。
そう、ミャンマー国内移動だ。
メーサイからタチレクに入り、前へ前へ。
が、厳然とそびえるミャンマー軍事政権の壁。
さて、どうなるか?

まあ、結論をばらしてしまうのは何だけど、不可能ではないがまだまだ制限が多いというもの。
詳しくは本書を読んでほしい。

ルートをやりくりすれば、東南アジア一筆書き大周遊陸路旅行はできなくもないということか。
あともうちょっとだ。
ミャンマーの陸路移動が全面的に解禁されて、さらにミャンマーとラオスの国境が開放されれば、もっと自由に移動できるようになる。
これにはミャンマーの政治状況や民族問題が絡んでいるようで、すぐには解決しそうにない。
早く平和になってほしい。

それにして、やっぱりおもしろいね、こういう貧乏体当たり旅行は。
まあ、別に貧乏節約旅行をしているから偉いってことはないし、普通に飛行機に乗ったり団体ツアーで行くのが恥ずかしいことなわけでもない。
好きなように旅行すればいいと思うんだけど、やっぱり、行き当たりばったりで創意工夫しながら、前へ進んで行くスタイルはおもしろい。
誰にでもおすすめできる旅のスタイルじゃないが、旅行の醍醐味であることも確か。

最近はパタヤ沈没ばかりになってしまったけど、こういう旅行本を読むと、またぞろ旅の虫がうずきだす。

うーん、やってみたいぜ、東南アジア大周遊旅行。

 

さて、タイ語にも堪能な下川先生。
以前このブログでも紹介したのが、「タイ語の本音」。
リアルに使えるタイ語満載の好著なので必読。

関連記事:パイナイ?と聞かれたら、こう答えろ。とにかく便利なタイ語、ミートゥラ。

今回の「裏国境突破 東南アジア一周大作戦」では、あまりタイ語の話は出てこない。
でも、一つ印象に残ったのが、「ローク クラーブ」というタイ語。
直訳すれば、「蛇の脱皮」。
で、日本語のニュアンスでは、「垢抜ける」という意味になるそうだ。
なるほどねえ。

お隣のラオスからタイに入ると、タイ女性たちのファッションや化粧がとても垢抜けて見えるとのこと。
20年前に比べれば、明らかに違うと力説する下川先生。
うん、たしかにラオスとタイを比べると、女性の垢抜け具合には雲泥の差があるように感じるなあ。
ビエンチャンはそうでもないけれど、地方同士を比べれば歴然としている。
ラオスがあと20年経てば、今のタイのようになるとは、ちょっと思えないけどね。

というわけで、タイに限定せず、東南アジア旅行好きならぜひとも、手にとって欲しい一冊。
旅に出たくなるよ。

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