「ONLY 13 The True Story of Lon」 by Julia Manzanares&Derek Kent
タイのバーや風俗店で知り合った女性と仲良くなれば、身の上話の一つや二つは必ず聞かされるはず。
いわく、イサーンの実家は貧乏で、金を稼ぐためにバンコクやパタヤに出てきて夜の仕事に
いわく、妊娠したが男に逃げられ子どもを養うために
・・・以下省略。
お決まりのパターン。
あまりにもありふれた話。
現在でこそ少なくなっただろうが、一昔前までは、実の両親や親戚に身売りされる例も多かったようだ。
この本はそんな典型的なイサーン娼婦・ロンの半生をつづったもの。
13歳で実の母親からパッポンへと売り飛ばされた少女・ロン。
母親はただ金がほしかっただけ。
愛する父はもういない。
変態ファラン多数登場。日本人も少々。
何度もファランと結婚してヨーロッパへ渡るロン。
だがそのたびに離婚し傷つき、またタイへと戻る。パッポンやパタヤで体を売る生活へ逆戻り。
幸せになりたいのに、どうしてもなれない。
どうしてこんな人生を歩まねばならないのか。
後半、ロンの精神が崩壊していく様が痛々しい。
90年代のエピソードが中心となる。
当時のタイでのバーガールたちの収入や生活実態が明らかにされている。
身売り額、バーでの収入などが具体的な数字で列記されているので興味深い。
ちなみに13歳でヴァージンを売って手にした額は1200USドルなり。
17歳の時パタヤのゴーゴーバーで働いていた頃の収入内訳も掲載されている。
おそらく1997年の話。BABY AGOGOという店で働いていたそうだ。BABY AGOGOってどこ?
(画像引用:ONLY13より)
当時は、ショートでもロングでも1000バーツだったのか。
セドリックは送金してもらっているファランの名前。
がっつり頂いているなあ。
月収71,800バーツ。
同時期の一般的な若いタイ女性の給料がこちら。あまりの差に愕然とする。
一番下の書き込みはわたしのもの。Seamstressで針子の意味。
ファランに送金してもらうためのウソ一覧も載ってある。
・お母さんが病気で病院代5000バーツ
・妹の学費5000バーツ
・妹が病気だから2000バーツ
・水牛が死んだ。10,000バーツ
・実家の屋根が雨漏りで3000バーツ
・天候不順でコメが不作。10,000バーツ。
・冷蔵庫が動かなくなった。4000バーツ
・中華正月、タイ正月、イサーン正月、仏教正月、その他思いついた正月、だからお金ちょうだい。
・いとこに赤ちゃんができた。仏陀へ幸運祈願するから2000バーツ。
・自分も家族もその他いっさいがっさいの誕生日だからお金とゴールドちょうだい。
こんなので、ファランは簡単に送金してくれるのだそうな。
正月のくだりは、日本人には通用しないぞ。
まあ、昔も今も手法は変わらないものだ。
みなさんも一度はこの手の援助申請を受けたことがあるはず。
わたしの場合は、弟がバイクで交通事故を起こしたからってのだった。
とにかく細かいエピソードがてんこ盛り。
90年代後半のバンコクやパタヤの内情がこれほど細かく描かれた本はそうそうないだろう。
その頃より現在のタイは少しは裕福になっているだろうけど、イサーン娼婦たちの実情に大きな変化はないと思う。
まとめ
あまりにもありふれたイサーン娼婦の話だが、こうして一冊まるごと半生を語られると、ちょっと気分が重くなってしまう。
明るくふるまうことの多いタイガールたちだが、その裏にはこういった内面があることを知るのも悪くないかもしれない。
が、それはそれ。
そんなことにはお構いなく、夜な夜なタイガールを求め歩くのが、由緒正しき外道の取るべき行動だろう。
でも児童だけはゼッタイにやめましょう。
なお、「ONLY 13」と題した公式サイトもあり。
簡単な本の紹介や写真などが載せてある。
以前はトップページに貼られたYOUTUBEで現在のロンのインタビュー映像を見ることができた。
だが、先ほどチェックしたら再生できなくなっている。
以前に見た映像では、ロンはすっかり元気になられた様子だった。
(上掲キャプチャー画像の左の女性がロンと思われる。)
「ONLY 13」は英語版のほか、ドイツ語、フランス語、スウェーデン語、フィンランド語の各国語版もあり。タイ語、ベトナム語、ロシア語版も出版予定のようだ。
だが、日本語版はなし。
旅行者や経済面など日本も少なからず関係しているので、出版する価値はあると思うんだけどねえ。
それほど難しい英語ではないので、ぜひ英語版で読んでみてほしい一冊。
タイ国内の書店でも入手可能。たぶん、まだ売っているはず。
わたしがアジアブックスで購入した時は485バーツでした。