現在タイ国内で大きなニュースとなっているのが、ミャンマーから不法に入国してきた複数のタイ人が感染していて、タイ国内に感染が広がりつつあるというものだ。
タイ人たちは、タチレクのナイトライフ施設で働いていたという。
タイとミャンマーの国境は閉鎖されており、タイ人たちは密かに国境を越えてミャンマーに入国し、その後、また密かにタイに再入国していた。
もちろん、タイ入国時の隔離検疫は受けていない。
感染した状態でタイ国内を移動した結果、各地に感染が飛び火しかねない状況となっている。
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経緯
ざっくりと経緯を振り返る。
チェンライにて、一人のタイ人女性から陽性反応が出た。
そのタイ人女性は、ミャンマーから帰国したばかりだが、本来必要な2週間の隔離検疫を受けていなかった。
つまりは自然国境を抜けて密入国してきたことになる。
その後、同じような密入国者の間で続々と感染者が見つかる。密入国したタイ女性たちはタチレクの同じ娯楽施設で働いていた。
中には、密入国する様子をフェイスブックに投稿したタイ人もいて、追跡調査したところ、パタヤへ向かう途中で逮捕されたケースもあった(ただし陰性だったもよう)。
また、飛行機でバンコクへ行ったケースでは、たまたまフライトに乗り合わせていた無関係のタイ人が感染していたこともある。完全に感染経路が特定されたわけではないが、おそらくはどこかで接触したと思われる。
このように感染がタイ国内に持ち込まれた。
メーサイとタチレク国境
タイ側の国境は、チェンライ県にあるメーサイという町。
ミャンマー側は、タチレクという町だ。
まず疑問に思うのが、そんなに簡単に国境を行ったり来たりできるのかという点。
陸続きの国境を持たない日本人からすれば、あまりピンと来ないかもしれない。
8年ほど前だが、実際にメーサイからタチレクに入ったことがある。
狭い幅の川の上の橋を渡るだけで、国境を越えられる。
左側がタイ、右側はミャンマー。
川幅はこんなもの。
民家が向かい合わせになっている。
ちょっとお隣さんまで醤油借りに行く程度の距離しか離れていない。
でも違う国である。
これを見れば、密入国など造作も無いように思えてくる。
もちろん、国境チェックポイント付近は警備が厳しく、簡単には違法入国できないだろう。
でも、もともと、地元民たちはチェック無しで両国を行き来していたようだ。
抜け道はある。
話によると、ミャンマーへ出稼ぎに行っていたタイ人女性はブローカーに6500バーツを払って、密入国を手引きしてもらったいたそうだ。
正規の国境が閉鎖されている以上、タイからミャンマーへ出稼ぎに行くには密かに出国するしかなかった。
多くの出稼ぎタイ人が10月か11月に出国していたようだ。
でも、タチレクでは感染が拡大。
タチレクの状況はあやふやで断片的な情報しか見当たらないが、どうやらタチレクの町はロックダウンされているもよう。
また、ミャンマーは夜間外出禁止令が継続して出されている。
そういった状況のため、急いで帰国するタイ人が増えたということらしい。
不法に出国したタイ人は、不法に入国する。14日間の隔離を回避する目的もあっただろう。
逮捕されたタイ人たちは罪に問われることになる。
最大限厳しく対応するとタイ当局は宣言している。
これにより、外務省やイミグレーションオフィスに登録のうえ、正規ルートで帰国するタイ人も出てきているとのこと。
この場合は、入国時の検査と14日間の隔離検疫を受けることになる。
タチレクの1G1ホテル
当初、タチレクでの詳しい感染場所は不明とされていたが、多くのタイ人女性たちが働いていた場所が発表された。
それが、1G1ホテル。
さっそく、グーグルマップやフェイスブックなどで調べてみた。
グーグルマップ
川を渡ればそぐにタイへ行ける。
フェイスブックの画像では、1G1-7 Hotelという名称になっっている。
(1G1 7 Hotel フェイスブックより)
実に豪華な建物。
タチレクにあるとは思えないほどの高級施設だ。
ホテルの他にディスコやカジノを備えた娯楽複合施設となっている。
こんなところがあったのか。
8年ほど前、タイからミャンマー側に入ると、いきなり道路の舗装は雑になり、建物もみすぼらしくなったのを覚えている。
経済格差がはっきりと感じられた。
トゥクトゥクに乗って市内をいろいろと回ってもらったが、高級ホテルらしき建物を見かけた覚えはない。
国境チェックポイント付近を離れると、パゴダは金ピカで派手だが、あとは田舎の掘っ立て小屋だらけという印象だった。
1G1ホテルについては、さらに詳しい情報が報道されるようになった。
地図で見たとおり、メーサイとタチレクの正規国境チェックポイントから東に1.5kmに位置する。
建物は4階建て。
ホテル、パブ、カラオケルーム、カジノ、ディスコなどを備えた複合施設。
1階にあるパブやバーやディスコの合計収容人数は1,000人。
2階にあるVIPカラオケルームは、20部屋以上あって、1時間あたり500バーツから2000バーツ。
あらゆる形態の「究極のエンターテイメント」を求めるハイエンドの顧客をターゲットとしている。
主な客は、タイ人、中国人ギャンブラー、裕福なミャンマー人と軍人。
ホテルとスタッフとして客から人気があるのがタイ女性ともことだ。
ホテルが完成したのは5年前。投資したのは、タイとミャンマーと中国人のビジネスマン。
最大の投資家は中国人だという。
なるほど。
8年前には影も形もなかったことになる。
また、グーグルマップの写真やフェイスブックを見るかぎり、明らかにメイン客層は中国人に思えた。とくにカラオケについては。
やはり、カジノと女遊びを求めて、多くの中国人が訪れていたようだ。
正確なルートは不明だが、中国国境との距離は250kmほど。
車で5時間18分と表示される。
(現在はミャンマー国境は閉鎖されているようだが)
ちょっと週末に遊びに行くくらいの感覚なのかもしれない。
それで、本国では禁止されている遊びが堂々とできるわけだ。
そういった金持ち層を狙って、多くのタイ人女性が国境を密かに渡って、出稼ぎに行く。
1G1ホテルの支配人が言うには、アウトブレイク発生前に約180人のタイ人女性がホテルで働いていたそうだ。
84人がすでに帰国しており、そのほとんどは不法に自然国境を越えたという。
なお、1G1ホテルでDJとして働いていてタイ人男性もタイに密入国してから感染が発覚している。
まとめ
12月4日時点で、1G1ホテルに直接関連した感染例は15件。
さらに増えていく可能性あり。
すでに、チェンライやチェンマイでは、ホテルやスパなどのキャンセルが相次いでいるそうだ。
とりわけツアーグループのキャンセルが目立つ。
これから年末の観光シーズンに向けて、観光業にとっては大きすぎる痛手。
ただ、タイの保険当局はきちんと対処可能であり、パニックになる必要はないと注意を促している。
また、国や県としてもロックダウンするつもりはないと発表している。
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