タイの物価上昇について少し考える。
本当にタイに物価は上昇しているのか。そして、一部で喧伝されているように日本並みの物価となっているのか。
いや、タイの物価は間違いなく上がっている。物価上昇は世界的な傾向だ。
タイだけが物価が上がらないなんてことはない。
あとは、円安による相対的な物価上昇もある。が、タイの物価上昇と円安はとりあえず切り離して考えないといけない。
ローカルな買い物でのタイバーツでの支払い額を見るのが一番だ。
それもできるだけ身近なものがいい。
広告
タイの物価は本当に高いのか?
まずやってはいけないのは、日本円で考えること。
急激な円安によって、日本円になおすと価格が上がったようにみえるのは当たり前のことだ。
よく日本のテレビなんかで取り上げられたのが、ハワイでラーメンが2,000円を越えたとかいう話。
ハワイの物価はもともと高いうえに、エネルギー価格高騰により値上げされ、さらに円安によってもっと高く感じるようになったというだけの話だ。
タイでは日本食はけっこう高い。
特に日系店舗はわりといい値段となる。
ちょっとした定食でも250バーツほどする。
1バーツ3円の時代ならば750円換算となり、まあ日本と同じ価格帯と言える。
が、1バーツ4円となってしまったので、1000円換算しないといけない。
たとえ値上げしていなくとも、もう日本より高くなってしまう。
むろん、これはもともと高かったことに加えて、円安の影響によるものだ。
タイの物価が高いと言いたいがために、日本食や日本製品を取り上げるのはあまりにも馬鹿げていると思う。
日系スーパーで売っている日本の納豆が高いから、バンコクは物価が高い、生活が苦しいという日本人の意見を見たこともある。
また、日本のカップラーメンが日本より高く売られているから、タイの物価は高いなんて意見もあった。
むろん、ツッコミが入っていた。あまりにもひどすぎる。
日本からの輸送コストや関税を完全に無視しているからだ。
それに、タイ国内生産品でもあっても需要が少なければ、コストが上がり、価格も高くなる。それだけだ。
はたまた、バンコク中心部の高層コンドミニアムに住んでいて、タイの住居費は高いなんて意見も目にして、びっくりする。
高くて当たり前なのに。
たとえば、イタリアから日本に来たイタリア人が、東京の六本木あたりのタワーマンションに住んで日本の家賃が高いと喧伝していたら、たいがいの日本人は盛大にツッコミを入れるだろう。また、六本木あたりでイタリア人シェフが腕を振るう本格イタリアレストランの価格が高い、だから日本の物価は高いなんて意見をイタリア人が主張したら、これまたツッコミが入るだろう。
スクンビット界隈に住んで、日本食と日本製品ばかりを買っている日本人が、タイの物価が高いなんて主張するのは、六本木のイタリア人と同じこと。
ちょっと話がずれた。
旅行者目線で見てみよう。
旅行者がまず気にするものの一つが、ホテルの価格だろう。
日本を出発をする前に、ホテル予約サイトなどでタイのホテルをチェックする。
この時に円建てでサーチすると、総じて価格が上昇していることになる。
円安なんだから当たり前。
3,4年前よりも大幅に円安となっており、たとえばもともと1,000バーツで予約できたホテルだと、以前は3300円だったところ、現在は4000円になってしまう。
ホテルの価格が上がっているかどうかを確かめるには、バーツ建てでチェックしないといけない。
タイのホテルなのだから、もともとの価格設定はタイバーツで行っている。
パンデミックにより多くのホテルが一時休業を余儀なくされたし、営業を続けたホテルでも宿泊料金は大幅に値下げしていた。
現在は多くのホテルが営業再開しており、また宿泊料金も元に戻りつつある。
パンデミック中のような激安価格では泊まれなくなった。
それでもパンデミック前より価格を吊り上げているようなホテルはほぼないと思う。
元に戻ったか、ちょっと安いくらいだ。
円安のせいで、日本円で検索している日本人からすると値上げしているように見えるかもしれないが、もともとの価格設定であるバーツだと変わっていない。
もちろん日本円で生活している人にとっては、実質的な値上げに感じるのは当然のことなのだが。
タイのローカルでの値上げ
もっと身近な例を取り上げて、タイの物価上昇を考える。
たとえば、ローカルな食堂での価格だ。
これはたしかに上がっている。
40バーツだったクイティアオやカオマンガイが50バーツに値上げ。
ガパオライスも目玉焼きにすると60バーツの食堂や屋台が多い。
カリカリ豚(ムークロップ)を使ったガパオでは70バーツすることもある。
もともと60バーツだったものは70バーツに上がった。
エネルギー価格の上昇、材料費の高騰により、価格を上げざるをえない。
中には、具材の量を減らして、価格は据え置きとする店もあった。それでも絶えきれなかったのか、結局は値上げした。
ぶっかけ飯も、惣菜1品のぶっかけなら30バーツあたりが相場だったように思う。
現在は1品でも40バーツ。へたすると50バーツだ。
ローカルエリアでも1回の食事を40バーツで済ますことが、なかなかに難しくなってきた。まあ探せばまだ安い店はあるけれど。
ローカルなコーヒー屋台でも値上げされている。
2年前は30バーツだったものが、1年前には35バーツに値上げされ、少し前には40バーツに値上げされた。
1年ほどで10バーツも上がった。
これはローカルな個人経営だけにしょうがない部分が大きい。
個人の努力で対処するにも限界がある。
缶コーヒーの値上げに物価上昇を痛感
最後に、もっと卑近な例を取り上げる。
個人的には、物価の上昇をもっとも感じた事例だ。
昨年末頃だったろうか、タイの味の素が販売しているBirdyという缶コーヒーが15バーツから17バーツに値上げされた。
Birdyは購入することはないので、これは気にならなかった。
Nescafe派である。
が、今年3月に日本一時帰国を終えて、タイに戻ったときのこと。
なんと、ネスカフェの缶コーヒーが15バーツから17バーツに値上げしているではないか。
ネスカフェのグレー缶が大好物だ。ほぼ毎日飲んでいるほどである。
それが17バーツに値上がりした。
たかが2バーツかもしれない。たったの8円だ。でも約15%の値上げだ。
さらに目を移すと、栄養ドリンクのクラティンデーンの青キャップも値上げされた。10バーツだったものが12バーツとなった。
これもショックだ。
クラティンデーンは、ロゴマークを見ればわかるように、レッドブルの元になったもの。
青キャップが一番好きで、これまたほぼ毎日のように飲んでいる。
こちらは、20%の値上げ幅だ。
ネスカフェとクラティンデーンの値上げを見た瞬間、タイの物価上昇が脳天を直撃した。心に刺さった。
あと個人的に刺さったのが、ケロッグのコーンフレークだ。
10バーツから11バーツに値上げされた。
たった1バーツ、されど1バーツである。
ネスカフェやクラティンデーンやケロッグといった大手メーカーがこぞって値上げした。
それも自分自身が日常的に愛用している商品ばかり。
特に缶コーヒーの値上げは本当に物価高を痛感させられた。
円安による痛手なんて目じゃないほど痛い気分だ。
缶コーヒーの2バーツの値上げなんて、実際にはそれほど大した額にならない。1日1本飲んでも、一ヶ月で60バーツ上がるだけ。
為替レートがよくなり、1万円=2500バーツが3000バーツとなれば、差額は500バーツ。
日本円を元手に生活している身としては、円高になってくれるほうがよっぽど大きい。
でも、心情的には缶コーヒーの値上げは本当に痛い。
そういえば、日本でも25年ぶりに缶コーヒーが値上げされるというニュースをさっき見かけた。
キリンのFIREは140円になるそうだ。
でも日本では缶コーヒーの安売り自動販売機や安売り店が多くて、FIREでも80円くらいで買えるところがある。
タイのネスカフェが17バーツなんで68円くらい。
タイの缶コーヒーは、特に安売りしているところは見かけない。どこでも17バーツだ。箱買いすればちょっと安くなる程度。
円安でもタイのほうがまだまだ安い。
でも、味は日本の缶コーヒーのほうが断然上。
コスパを考えると、日本の安売り缶コーヒーは素晴らしいと思う。
まとめ
とりとめのない話となったしまったが、とにかくタイの缶コーヒーの値上げは個人的には痛手。
これこそがタイの物価上昇を感じさせるものだった。
パタヤの夜遊び価格の上昇とか、豚肉価格の高騰とか、ガソリン価格の上昇とか、そんなものより缶コーヒーだ。
物価上昇を感じるのは、ローカルかつ身近なものであればあるほど強い。
缶コーヒーが15%値上げして、栄養ドリンクが20%アップで、コーンフレークが10%アップだ。
円安ショックなど吹っ飛ぶほどのショックだった。
広告