パタヤのナイトスポットが再開して1ヶ月あまり。
ソイブッカオ界隈のバービアはおおむね再開済み。
寂しい客入りのバーがほとんどだが、それでもファランが昼夜とも飲んだくれているような店もある。
ここ最近出会った沈没ファランの話をしよう。
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パタヤ在住10年のファラン
バービアで一人飲んでいると、客のファランからビリヤードしようと誘われた。まったく面識のないファランだ。年の頃なら50前後だろうか。すでに酔いが回っているようで、ろれつも回っていない。
キューを持つ手もおぼつかない。
あっさりと勝利して、自分の席に戻る。
と、そのファランが隣に座れと手招きしてくる。
酔っぱらいファランは正直面倒くさい存在だ。
最初は断っていたが、あまりにも執拗な誘いのため、彼の隣の席へ移動。
そのファランは、イングランド出身。
ただでさえ聞き取りづらい下町英語がろれつが回っておらず、よけいに聞き取りづらい。
まあ簡単な内容なのでだいたいは理解できるが。
パタヤに住んで10年だという。
その間、母国へ帰ったのは一度きり。
筋金入りのパタヤ沈没ファランである。
レゲエ音楽が好きなようで、ボブ・マーリーの曲をYou Tubeで流している。
変なノリ方。
そして、ひどい酔っぱらい方だ。
距離が近い。
バッファローソルジャーを口ずさみながら、こちらの肩に手をまわし、顔が目の前に迫ってくる。
こいつ、ひょってして、そっち方面のやつか?
それとも、頭の中までジャマイカンな煙でいっぱいなのか?
と、お次は、急にドアーズに音楽を変更。
ジム・モリソンは、唯一無二で最高だと念仏のようにひとりごちている。
ジム・モリソンがすごいのには同意するが、こいつはやっぱり、煙と酒か。
脳みそに蜘蛛の巣がはった酔っぱらいファランの絡み酒ほど鬱陶しいものはない。
すぐにでも立ち去りたいところだが、タイミングをはかりかねた。
困ったものだ。
パタヤ在住20年のファラン
と、少し離れたところで飲んでいる巨漢ファランいた。
ひげもじゃ、全身タトゥーだらけで、皮の袖なしジャケット着用、首にはぶっといシルバー系アクセサリーをかけている。
見るからにやばいやつだ。
そのやばそうなファランが、Hells Bellsが聞きたいと言い出した。
ということは、AC/DCだな。
ルックス通りのわかりやすい選曲だ。
わたしが入力してAC/DCにチューン変更。
お、こいつわかってるなと、巨漢ファランが挨拶してきた。
AC/DCが大好きでレア物のレコードコレクターでもあるそうだ。
話をしてみると、普通にいいやつ。
ビールをまるで水のように飲み干し続けているが、発音はきっちりしているし、アジア人相手にはゆっくり話す心遣いもあり。
隣の席へ招待してくれ、しかもビールまでおごってくれた。
なんていいやつだ。
おかげで、ややこしいファランから逃れることができた。
AC/DCファランは、やはりオーストラリア出身。
パタヤ在住歴20年だという。
昔は仕事で日本に何度も行った経験があり、日本人に対してもすごくフレンドリーだ。
見た目とは違って、本当にいいやつである。
こういうファランと飲むのは楽しい。
と、最初の酔っぱらいファランが、わたしとAC/DCファランの間にふらふらと割り込んできた。
またからもうとする
が、AC/DCが断固たる態度で拒否。
ネイティブ同士の会話のためすべては聞き取れないが、「二人で飲んでいるんだ、邪魔しないでくれ」みたいなことを告げて、酔っぱらいファランを追い返していた。
一瞬殴り合いになるかと焦った。
けんかをやめて。わたしのために争わないでほしい。
が、さすがに巨漢相手に分が悪いと察したようで、すごすごと立ち去る酔っぱらいファラン。
この勝負、パタヤ沈没20年ファランの勝ち。
体格的にも人間的にも、そしてわたしにおごってくれる気前の良さからも、20年沈没の圧勝だ。
わたしごときなど、パタヤ沈没界ではまだまだひよっこ同然。
10年ではまだ見習い、20年でようやく独り立ち。
老舗の寿司職人か、黒人ブルースマンのような世界なのである、パタヤ沈没界は。
かくして、パンデミックもどこ吹く風く、今宵もパタヤのバービアには沈没ファランたちが集う。
いや、まあ、バービアで楽しく飲めればなんでもいいんだけどね。
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