「I AM ERI MY EXPERIENCE OVERSEAS」 by Thanadda Sawangduean
タイトルが「わたしはエリ 海外での体験」
副題が「性的労働者になることを運命づけられたタイ女性の悲劇」とある。
タイトルから想像できるように、エリとは日本の源氏名だ。
日本のタイパブで働いていた時につけられたもの。
というわけで本書の舞台は大半が日本となる。
エリは、貧困家庭に生まれ、パタヤで売春婦として働くようになるというお決まりのコース。
それから香港と日本に渡る。
日本ではタイパブなどで働く。
やがて、ナカヤマという名の893に囲われ、そののちシンヤという堅気の男と結婚。
埼玉で挙げたというシンヤさんとの結婚式でのツーショット写真もばっちり掲載。
残念ながらシンヤさんとは離婚してしまい、タイへ戻ることとなった。
おそらく1990年代の話が中心だが、当時の日本のタイ人売春の内部事情がよくわかる内容となっている。
かせぎは、ロングで7000バーツから8000バーツ。ショートで5000バーツくらい。
レートが1万円=1800バーツの時代だ。
半ば軟禁状態のタイパブから地方へ逃げ出すくだりなどは、とても興味深い。
日本へ渡航するため、ブローカーへの借金は250万円。
日本で働くタイ人は、893のことを「Kor」と隠語で呼ぶそうだ。これは、日本在住タイ人限定の言葉。
そんなエピソードが満載で、読んでいて飽きない。
日本を離れてからも、エリさんの波瀾万丈の人生が続く。
現在ではアメリカ人の恋人と平和に暮らしているそうだ。
とりあえず、めでたしめでたし。
このような人生を送っている、いや、送らざるを得なかったタイ女性は、たくさんいるに違いない。
借金を背負ってまで海外へ出稼ぎに行くタイ女性たち。
パタヤでバービアを経営している知り合いのオーナーママさんがいるが、彼女も元ジャパゆきさん。
不法滞在だったらしく、イミグレーションにばれて強制帰国させられたそうな。
それでも、借金を返済したうえ、貯金もできたので、パタヤで比較的大きなバービアを経営できるまでになった。
たまに日本語が話せるおばちゃんバービア嬢やゴーゴーバーの給仕がいるけど、過去にジャパゆきさんをしていたか、タイで日本人駐在員のミアノイをしていたケースが多い。
国は変わるけど、フィリピンのゴーゴーバーでは、各店に一人は必ずと言っていいほど日本語が達者な中年女性がいる。
日本で規制が厳しくなるまでは、ジャパゆきさんが本当に多かった。
その名残で、フィリピンやタイには、元ジャパゆきさんをまだまだ見かける。
現在、タイ女性たちの出稼ぎ先は、韓国やシンガポールが増えてきた。
わたしの知り合いも何人か、韓国とシンガポールへ出稼ぎに行っている。
SNSの投稿を読んでいると、他にも多くのタイ女性が韓国とシンガポールに出稼ぎに行っているようだ。
中にはマレーシアもある。
そこそこの額になるそうで、滞在期限ぎりぎりまで居座って稼いでいるらしい。
パタヤでバービア嬢をやるよりも確実に儲かるのは確か。
ただし、精神的にはけっこうきついらしい。
日本に遊びに行っている例は多いけど、あまり出稼ぎは聞かなくなった。
ノービザ入国が可能になったから、もっと増えるかと思いきや、意外とそうでもないみたい。
まあ、わたしが知らないだけかもしれないけれど、おそらく、現在の日本ではそれほど稼げないのが実情ではなかろうか。
まとめ
英語は平易で読みやすい。しかも舞台の大半は日本とパタヤ。
まさに日本人タイフリーク向けの本だ。
が、残念なことに邦訳はされていない。
しょうがないので、英語で読もう。
アマゾンでの取り扱いはないようだ。
入手はタイ国内の本屋でどうぞ。
わたしが購入した時は485バーツだった。
この手の、タイ女性の半生をつづったものとしては、「ONLY 13」もおすすめ。
関連記事:パッポンに売り飛ばされ13歳から働かされた少女の物語。ONLY 13
関連本
日本で働くジャパゆきさんたちを追跡したドキュメンタリー。タイやフィリピンだけでなく、南米まで現地取材した力作だ。
ジャパゆきとは、かつて日本から東南アジアへ出稼ぎに行っていた娼婦たち「からゆき」のもじり。唐へ行くと書いて、唐行き。
日本人女性がシンガポール、ボルネオ島など東南アジアで娼婦として働いていたのだ。
そんなからゆきさんたちの悲哀を描いたのが、この「サンダカン八番娼館」。現在の文庫版には、続編の「サンダカンの墓」も収録されている。必読。