Confessions of a Bangkok Private Eye by Warren Olson and Stephen Leather
タイで長年にわたり私立探偵をやっているウォーレン・オルソンの事件簿をまとめたもの。
as told to STEPHEN LEATHERと書かれてあり、おそらく実際に執筆しているのはレザー。
スティーブン・レザーといえば、もちろん、名作「Private Dancer」の著者だ。
ベストセラー作家のレザーのペンによるものなので、この私立探偵本はとても読みやすくておもしろい。
全部で23の事件簿が掲載。
「The Case of The Pattaya Play-aways」と題された事件簿を紹介しよう。
オルソンへの調査依頼は別々に2件あった。
一つは、シンガポールの婦人からの依頼。旦那が休暇と称して何度もパタヤへ旅行しているが、女がいるのではないかと疑わしいので、調査してほしいとの依頼。
もう一つは、マレーシアに住むファランビジネスマンからの依頼。妻はタイ人で、二人の間には子どももいる。仕事と子どもの教育のため、クアラルンプールで生活している。でも、妻のタイ人は、ホームシックにかかり、タイへ帰国。後々のため、パタヤ郊外に大きな家を建設中。が、最近、妻の素行が怪しいので、調査してほしいとの依頼。
まあ、どちらも身辺調査というか浮気調査だ。
バンコクから車を飛ばして、調査に向かう探偵オルソン。
まずは、1件目の依頼から。
シンガポール妻から旦那の宿泊先と顔写真を提供されており、調査対象者を特定するのは簡単だった。
同じホテルに投宿して、ロビーで見張っていればいいだけ。
ホテルはビーチロードのソイ8。パタヤ有数のバー密集地だ。
この時点でクロを確信するオルソン。
案の定、シンガポール旦那は、近所のバービアで女を侍らせて豪遊三昧。
最後は一人の女性をお持ち帰り。
ああ、クロ決定。
ホテルへ連れ込む現場の証拠写真を隠し撮りして、シンガポール妻へ調査報告のEメールを送る。
あとで聞いたところによると、妻は離婚するつもりらしい。
哀れ。
さて、2件目の依頼。
ホームシックからタイへ戻ったタイ嫁の調査だ。
まずはパタヤ郊外に建設中だという家の現地調査から。すると、家は建設途中で放棄され、無残な状態に。近所で聴きこみをすると、くだんのタイ女性は、サウスパタヤでオープンレストランを経営しているとのこと。
ステージが設置された半野外の飲み屋兼レストランだ。
パーティをしたいという名目で接触をはかる探偵。女性と面会する機会を得て、情報収集。
相手が探偵だとは露とも思わず、パタヤでは警察官のボーイフレンドがいると、あっさりと告白するタイ嫁。
はい、クロ決定。裏付け調査してもクロなのは間違いなし。
クアラルンプールにいる依頼主に調査結果を報告。
これまた、のちに離婚するつもりらしい。
オルソンによれば、タイの私立探偵への依頼のほとんどがこの手の身辺調査らしい。
すでに結婚している間柄でなくとも、フィアンセや恋人の身辺調査をしてほしいという依頼も多いそうだ。
ほとんどが中年ファランからのもの。
つまり、バンコクやパタヤの夜のお店で知り合った女性がいるとしよう。
旅行中に出会い、恋に落ちる。
ファランは休暇を終えて、本国へ帰る。
タイ女性はタイに残る。でも、もう夜の仕事はしてほしくない。
で、夜の仕事を辞めさせるかわりに、送金する。
が、本当に夜の仕事を辞めたのか不安だから、調査してほしいという流れ。
はたして、調査の結果のほとんどがクロと出てしまう。
オルソンはこれまで300人のバーガールを調査したが、なんと全員クロだったそうな。
送金してもらっていても、平気で他の客を取っていたのである。
まことに厳しい世界であることよ。
そんなわけで、家族に偽ってタイ夜遊び旅行へ出かけている家庭持ちのみなさんへ。
私立探偵には気をつけろ。
いつどこで見張られているか、わからないぞ。
鼻の下をのばして女性(一部LB)をホテルに連れて帰ったところをパシャリ。
日本の我が家に帰ったら、鬼の形相をした嫁から証拠写真をつきつけられ、そして離婚届け用紙が目の前に。
ああ、おそろしや。
まあ、とりあえず、タイへ遊びに行くとは言わないほうがいいかもね。
ましてやホテル名を教えるなんて愚の骨頂。
黙って旅立ちましょう。
そして、立つ鳥跡を濁さず。
証拠は残さず、きれいに遊びましょう。
あと、本国からタイの夜の女性へ送金している人。
ほぼ100パーセント、騙されている。
と、オルソン探偵は長年の調査経験から断言しております。
まあ、ごく一部例外はあるだろうけど。
ほんのごく一部ね。
利用されているだけとわかっていて割りきって送金する分には別にかまわないと個人的には思いますがね。
そんなわけで、実に教訓に満ちた事件簿が全部で23件も掲載されている。
各章も短くまとめられており、英語の長文が苦手な人でも気軽に読める。
かなりおすすめの一冊。
ペイパーバック版とキンドル版も入手可能。わたしがタイの本屋で購入した時は530バーツだった。
もう一冊、類書がある。
「THAI PRIVATE EYE」
これもオルソンが遭遇した事件簿のようだが、当方、未読のため詳細不明。