中国が来年1月8日に開国することになった。大量の中国人旅行者が海外へ殺到するのではと誰しもが思うところだ。
日本、台湾、アメリカ、イタリア、インドなどは中国からの到着者への規制強化を早々に決定した。
イタリアでは中国からの到着便の乗客を検査したところ、実に半分が陽性結果となり、規制強化を決定したという。
では、タイではどうなのか。
2019年のタイへの外国人観光客は3990万人、そのうち中国人は約1,100万人で、圧倒的シェアナンバー1だった。
来年1月21日から春節が始まる。
パンデミック前と同じ状態になれば、春節の1週間での大量の中国人観光客がタイにやって来る可能性もある。
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タイは規制強化せず
タイへ中国人観光客がいつ戻ってくるのか、春節はどうなるのか、はたまたタイ政府は日本や台湾のように中国からの旅行者に入国規制を強化するのか。
中国政府の開国決定がくだされて以来、タイ国内メディアでは連日報じられている。
ここではバンコクポスト紙の報道を中心にまとめておこう。
簡単にいえば、すぐに大量の中国人観光客が戻ってくることはないし、タイ政府は規制強化をしないということだ。
タイでも中国観光客の大量流入による感染拡大を懸念する声は大きい。
そんな中、アヌティン保健大臣は、中国人観光客がいきなり戻ってくるとは予期していないため、中国から到着する旅行者への規制措置の必要はないとのコメントを出した
中国からの旅行者には、出発前もしくは到着後のPCR検査は要求しないと。
つまり、アメリカやインドが打ち出した陰性証明書提出義務や、日本や台湾が打ち出した到着時空港検査義務も不要というわけだ。
中国からの到着者は、ほかのすべての旅行者と同じ措置を取ると大臣。ただし、医療保険加入だけは遵守しないといけない。
この医療保険加入というのは、タイランドパスがあった頃は必須条件であったが、その後は強く推奨という形になっており、強制加入ではなくなった。
が、もしタイ国内で感染して発症しても、無料では治療は受けられない。すべて旅行者が負担する。治療費をカバーするための医療保険加入が必要というわけだ。
アヌティン大臣の見立てでは、中国政府はインバウンドとアウトバウンドの両方の旅行者にPCR検査を含む規制を課しており、中国からの到着者は当初は制限されるだろう。
中国人が流入してくるという憶測は人々を不安にさせるが、徐々に到着すると信じると大臣は述べている。
なお、タイ国政府観光庁(TAT)では、中国人観光客は1月5日から到着し始め、第1四半期には約30万人となるだろうと予測している。
タイに中国観光客は殺到するのか?
中国の隔離措置撤廃と海外旅行自由可方針を打ち出したあと、中国人観光客がいつタイへ戻ってくるのか、タイの観光業界とタイ政府は冷静に対応を取っていた。
タイの観光業界では、中国の開国を歓迎しつつ、中国人が海外へ出かけるのはまだまだ先になるだろうと予測している。
理由はいくつもある。
・中国国内の感染状況がどうなるか不安のため、当面は海外旅行を控える人が多い
・パンデミックとゼロコロナ政策により経済的に厳しい人が多い
・フライトが少ない
中国の厳しい制限のため、国際線の運航便数は著しく減少していた。便数制限はすでに解除されたということだが、航空会社としてもすぐには増便できない。タイライオンエアによれば、フライトの運航には、最低でも1ヶ月前の通知が必要なため、春節に間に合うように中国本土へのフライトを拡大できるかは約束できないとしている。
また現状では便数が少ないため、航空券の価格が高騰しており、簡単には海外へ行けない。
・パスポートの新規発行と更新に時間がかかる
中国では、自国民の海外旅行を原則禁止し、パスポートの新規発行と更新も特別な理由をのぞいて停止していた。来年1月8日にはパスポート申請を再開するとのことだが、発行までには時間がかかる。とてつもない数となるため、春節までに間に合わない可能性が高い。
・団体ツアーの解禁時期が不明
中国は自国民の海外旅行は秩序立てて再開させると発表している。現時点では具体的な時期ははっきりしない。特に団体ツアー再開については不明だ。今はまだ団体ツアーの販売は停止されたまま。
・陰性証明書が必要
1月8日には中国入国後の隔離措置が撤廃されるが、陰性証明書の提出義務は残る。現行のルールでは、中国政府が認めた検査機関もしくは中国政府指定フォーマットで証明書発行な検査機関でのPCR検査を出発前48時間に受けなければいけない。帰国のためのハードルが高い。
以上のような理由から、すぐには中国人観光客がタイに殺到することはないとタイの観光業界では予測している。
春節に間に合うかも不透明な状況だ。
受け入れ再開準備は進める
タイでは、政府も民間も中国人観光客の帰還を歓迎するため受け入れ再開準備を進めるとしている。
1月5日には首相府にて閣僚会合を開く。
保健省は中国人の旅行再開の詳細について中国大使館と調整中。
運輸大臣によれば中国人旅行者の再開は徐々に進むとの予想だ。フライト数と観光客数に関する情報収集をおこない、計画を立てるのに1週間かかるという。
航空会社はタイ空港公社に要請を出し、当初は中国からバンコク、チェンマイ、プーケットへのフライトを再開させる可能性がある。また春節期間中にチャーター便が運航される見込みとのことだ。
プーケット観光協会の予測では、中国人観光客が戻ってくるのは第1四半期の終わり頃になるという。
中国での感染が広範囲に及んでいるため、春節に海外旅行に行くには時期尚早であろうと。
中国人観光再開の前に、ホテルや航空会社や入国管理局などでの人手不足の問題を解決する必要がある。空港での預け荷物の積み下ろしも大きな課題だ。
中国とプーケットを結ぶフライトを増やす必要もある。
ツアーガイドライセンスの更新をスピードアップし、中国語の標識や案内板の準備も必要だとしている。
現在プーケットの民間事業者の約6割が事業再開。中国人観光客が戻れば、さらに20%の事業が再開できるとプーケット観光協会。
参照:https://www.bangkokpost.com/business/2471217/call-for-tourist-booster-shots-as-chinese-return
来年の中国人観光客は500万人
2019年のタイへの外国人観光客は約3,990万人で、そのうち中国人は約1,100万人だった。
TATの予測では、中国の再開によって、2023年の外国人観光客数の予測は2,000万人ではなく、2,500万人に達する可能性が高いとしている。
つまりは、来年1年で500万人の中国人観光客がタイにやって来るだろうとの計算だ。2019年の半分弱となる。
それでもかなりの数だ。
ただ、年明けの中国開国でいきなり大量の中国人観光客がタイに殺到することはないし、春節でもまだまだ少ないだろう。
とはいえ、中国の人口は14億人。圧倒的大多数は海外旅行を見送るとしても、1000人に1人が海外へ出るならば、140万人にもなる。さらにそのうちの5人に1人が旅行先にタイを選択すれば、28万人だ。
TATの予測どおりならば、1月5日から中国人観光客がタイに戻ってくる。団体旅行は不可でも個人旅行なら可能だ。
日本人旅行者よりも中国人旅行者のほうが多くなるタイの光景はそう遠くないかもしれない。
今しばらくは冷静に様子見が必要。
最も重要なことは、どれだけ多くの中国人旅行者がタイに戻ってくるかではなく、国が新たな感染の波を回避し、タイ人の安全を守ることだと、TAT長官は述べている。
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