沈没日記22
バービア嬢と心ならずもショート遊びとなった翌日のこと。
一年以上の付き合いとなるカラオケ嬢から久々に連絡があった。
半同棲生活を続けていたが、彼女が薬関係でしょっぴかれて、わたしが逃げるようにして遠ざかった。
前回のパタヤ滞在最終夜に彼女が部屋に泊まりに来て、再会を果たしている。
それ以降は、ごくたまにSNSのメッセージで挨拶する程度。
わたしがパタヤへ戻って来てからも、まったく交流は無し。パタヤへ来ていることも告げていない。
そのカラオケ嬢から突然連絡が入る。
なんとも豪速球なメッセージだこと。
どうやらわたしがパタヤに来ていることは承知の模様。
まあ、パタヤで昼も夜もぶらぶらしているから、誰かしらには目撃されている。バレるのは必然。
そういえば、この前、ウォーキングストリートあたりでカラオケ嬢の友人とすれ違ったような気もする。
あっさりと情報ネットワークに引っかかったようだ。
薬関係は問題なさそうだし、特に断る利用もないかな。
オッケーを出しておく。
マッサージからのブンブン
19時過ぎ、まずはメッセージが届く。
20分後の来るとのこと。
実際には28分後、彼女はやって来た。なかなか上出来。
昨年の11月以来の再会。
なんだかとても元気そう。
出所したあとは、かなり凹んでいたみたいだが、すっかり明るくなった。
薬は断ったようだ。じゃないと困るが。
肩が凝ったから揉んでくれと、リクエスト。
「ビープ」という表現を使っていたから、かなり力を入れて揉んでみた。
普通のマッサージでの「揉む」は、「ヌアット」を使う。ビープは、力いっぱい揉むことを差すみたい。胸を思いっきり揉む場合は、「ビープ ノム」でいいのかな。柔らかくもみもみするなら、「ヌアットノム」か。このあたりの表現の機微はよくわからん。そもそも合っているかもわらかん。たぶん、通じるけどね。
とりあえず、彼女の固いコリをほぐすには「ビープ」がいいみたい。思いっきり背中と肩を揉みほぐした。
20分ほどマッサージさせられた。けっこう疲れるなあ、これ。マッサージ師たちの苦労がしのばれる。
チップ100バーツよこせと言ったら、鼻で笑われた。
逆に、おこづかいを請求された。おいおい。
「マイミータン(お金がない)」と、これまた直球を投げてくる。
じゃあ、やりますか。
数ヶ月ぶりのブンブンとなった。
うーん、やっぱり彼女とは体の相性がいいよなあ。
特にサービス抜群なわけでもないのだが、どうにも具合がよろしい。
先方の感度も良好。顔を歪ませながら、シーツやまくらをぎゅっと握る仕草が男心をくすぐる。
演技でやっているとしたら相当な役者だ。
ふう。
昨日の欲求不満がちょっとは解消された。
わたしからおこづかいを受け取ると、彼女はすたすたと出ていった。
ちなみに、おこづかいとは、1000バーツ札一枚のことである。
ま、割り切った関係でいいやね。
深夜の腹減った
深夜4時過ぎ。わたしがパソコンをいじっていると、彼女からまた連絡が入る。
Facebookメッセンジャーのログインマークを見たようだ。
わたしがまだ寝ていないことを知ると、
とのこと。
続けざまに、ボイスメッセージが届く。
開いてみると、「ヒューカーオ!」
出ました。得意の腹減った攻撃。3秒に凝縮された怨念を感じる。
でも知らんがな。
と、返事しておく。勝手に食べてなさい。わしは寝る。
ほどなくして彼女が到着。
手には、焼き鳥とカオニャオが入った袋をぶら下げている。
おっさんかよ。
「ギンマイ?(食べる?)」と聞かれたが、もう眠たいよ。食べません。
わたしがベッドにもぐってうとうとしていると、彼女は床に座って、焼き鳥とカオニャオもぐもぐくちゃくちゃ食べている。
お腹が満足したようで、部屋の電気を消してから、わたしの横に寝転がる。
腕を貸せと言われた。タイ語では、「コー ムー ノイ」だったかな。ムーは手のムーね。豚じゃないよ。カタカナ表記ではどうしようもないが、ムートゥー(携帯電話)のムー。「腕」の言い方は別にあるはずだが、たしかにムーと言っていたなあ。状況からして、明らかに腕枕を要求しているので、素直に腕を差し出す。
で、彼女はわたしの腕を枕にしながら、ムートゥーでゲームを始めた。
さっさと寝なさいよ。
10分ほど遊んで満足したのか、ムートゥーを放り出し、わたしの胸に飛び込んできた。
安眠の妨げとはまさにこのこと。
こちらの事情などいっさい配慮してくれない。
しかも、わたしより早く熟睡モードへ突入したようだ。
自由気ままだなあ。
まあでも、そんなに悪い気はしないかな。わりと好き。
抱き合ったまま寝ていると、突然、彼女の携帯電話から呼び出し音が鳴りひびく。
時計は確認していないが、まだ1時間くらいしか経っていないはず。
電話口の向こうからは、中年女性らしき声が聞こえてくる。
がみがみと怒っているもよう。
さっぱり聞き取れないし、眠気で朦朧とした意識では理解する気力もない。
どうやら急用ができたみたい。
彼女は、ぱっと起き上がり、「また電話する」と言い残して、さっさと部屋を出ていった。
滞在時間1時間か2時間くらい。
嵐のようにやって来て、嵐のように去っていった。
何だったんだ、まったく。
意味不明だが、これぞタイガールといったところですな。
考えるだけ無駄なこと。今はひたすら眠たい。
また気が向いたら、むこうからやって来るでしょう。
これくらいの関係が気楽でいいやね。