「Diary of THAI escort」 by Anonymous
ある事情からタイの故郷にいられなくなり、ロンドンのエスコートクラブで働くようになったタイ人女性の日記という体裁をとった小説。
著者名は、アノニマス。サイバー攻撃をしかけそうな名前である。
まあたぶん、ファランの男だ。それもタイで遊んだ経験のあるファランに違いない。
タイ人が英語で日記を書いているとの設定なので、とてもシンプルな英語で読みやすい。
ほぼ辞書がいらない。
In-callとかOut-callとか、ちょっとした用語の勉強にもぴったりだ。
ちなみに、In-callとは、女性の部屋へ客が訪れるスタイルで、Out-callはその逆で、女性が客の部屋へ訪れるスタイル。
日本風になおすと、前者が箱ヘルとかマンヘルで、後者が後者がデリヘルになるのかな。よくしらないけど。
さて、主人公はイサーン出身のタイ女性。
子どもが一人いるが、夫はいない。でも金持ちの愛人がいてミアノイとして、なんとか暮らしていた。
が、その愛人関連のトラブルで、タイを離れて、ロンドンへ雲隠れすることとなった。
手配したのは、くだんの愛人。
語学留学という名目でのロンドン滞在であるが、金を稼ぐ必要があり、エスコートクラブで働き出したわけである。
ロンドンのエスコートクラブの実態とはいかに。
次から次へとやってくるロンドン野郎たち。
学校の制服を着せた上で足をなめるだけの変態さん
バイアグラを飲んで何発もやろうとするドーピング野郎
そんな愉快な人たちがいっぱい。
主人公は自分がタイ人であることを隠しているが、中にはタイで遊んだ経験のある男もいて、執拗にタイ語で話しかけてくる。
タイ語がわからないふりをして、必死に隠す主人公。
わたしは安っぽいタイの娼婦とは違うのよ、と自分に言い聞かせているようだ。
確かに料金は高い。
なんと2時間のショートで300ポンド。現在のレートでは約5万円。高いよなあ。
どれだけ事実に即しているかは不明ながら、ロンドンの売春事情とタイ人社会の様子がよくわかる。
タイ女性たちは、やはり仲間同士で集まり、タイ料理を食べながら酒をのみ、ギャンブルに興じる。
負けがこむと、友人から借金。せっかく体を張って稼いだカネがパー。
遠い異国で働いていても、タイにいた頃と変わらないパターン。
このあたりは、どこの国の人間でも似たようなものかな。
日本人は日本人同士で集まり焼酎や日本酒を飲むし、ファランはパブに集まってビールを飲むものだ。
小説の中身に戻る。
最近のロンドンでは、ロシア系マフィアが幅を利かせているらしい。
でも実はロシアではなく、リトアニア。
そのリトアニアマフィアにパスポートなどを奪われ、四面楚歌に陥る主人公。
マフィアたちの集まる館で、薬漬けにされたり、まわされたりと、まさに生き地獄。
が、それでも頭の中に浮かぶのは、幼きわが子の顔。
ふんばるイサーン女性。
このあたりの描写は、なかなかスリリングでおもしろい。
最後は、起死回生の方法で窮地を脱し、無事に子どもが待つタイに戻ることができた。
が、その方法とは、まさかのクメール式黒魔術。
惚れ薬をマフィアの一員に飲ませて、思い通りに操ったのだ。
そりゃあ、ないよ
と言いたくもなるが、最後はハッピーエンドなので気持ち良く読み終えることができた。
読了感は、けっこう爽やかだった。
何もないイサーンの平原に吹く一陣の爽やかな風とでも言おうか、そんな感じ。
イサーンに帰れてよかったね。
簡単な英語と、アルファベット表記のタイ語がちょろっと出てくるだけなので、とにかくサクサク読める。
ちょっとした暇な時間に読み進めるには最適な一冊。
英書ペイバーバック初心者にもオススメだ。
タイ国内の書店では、ペイパーバック版が439バーツだった。
Amazonでは、kindle版のみ購入可能。