パタヤ千夜一夜

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バンクワン刑務所へようこそ THE DAMAGE DONE

投稿日:2014年12月8日 更新日:

「THE DAMAGE DONE」 by WARREN FELLOWS

damage done

時は90年代後半。場所はバンコク、カオサン通り。某ゲストハウス。
ラオスを旅行中に知り合った日本人に教えられて初めて泊まった宿。
木造の古いゲストハウスで、ソファーのある2階のスペースは、日本人の溜まり場となっていた。

蒸し暑い午後のひと時、ようやく起き出した日本人パッカーたちが集まりはじめる。
他愛のない無駄話のあと、一人が柱の陰に隠してあった吸煙具を取りだすと、宴が始まった。
それは紫煙の宴だ。独占は許されない。仲良くシェアするのがお約束。
輪になって、芳醇な香りを堪能する。

次第に興がのってきたのか、誰かが過去の危ない話を切り出した。
白い粉に関する話題だった。
あれは最高だが、最悪だ。
すべての意識が吹っ飛び、あらゆる感覚が弛緩し、宇宙と交信するかのごとき高揚感と地獄に落ちるかのごとき堕落感をいっぺんに味わえる。
だからやめられない。
とか、なんとか。

あとで聞いた話では、そこはジャンキーが集まることで有名なゲストハウスだった。
アルファベット二文字のゲストハウスといえば、昔からのバックパッカーならピンと来るかもしれない。

これまた伝聞だが、たまに警察の手入れがあったらしい。

白い粉には手を出さない。
警察への袖の下も難しいようだ。

個人で消費する分ならともかく、密輸目的で大量に所持しようものなら、どうなるか?
それが、本書「THE DAMAGE DONE」の著者、フェローズのなれの果てである。
すなわち、タイでもっとも厳しいといわれる、悪名高き「バンクワン刑務所」行きだ。
表紙に写ったフェローズのように、手かせ足かせをつけられて連行される羽目になる。

副題として「バンコク刑務所での地獄の12年間」とある。
いやはや、一読して、びっくりだ。とにかく面白い。
次から次へと刑務所での悲惨な境遇が描かれる。

つかみのエピソードはこんな感じ。
ちょっとグロい描写なので注意。

夜中に悲鳴が聞こえて目が覚める。
向かい側の牢にいる囚人があまりの痛みのため動けずにうずくまっている。
首の辺りに大きなコブができていて、その中では何かが蠢いているように見える。
カミソリでコブを切開してみると、中からは無数のゴキブリの幼虫がぞろぞろと・・・。
体内に侵入したゴキブリが卵を産みつけていたのだった。

刑務所での食生活、住環境、暴動、そしてその暴動への懲罰。
日本の常識からすれば想像を絶するようなバンクワン刑務所の実態。

虫や糞尿ネタが多いような気がする。それだけ劣悪な環境だと言うことか。
タンパク質摂取は、ゴキブリから。
まさに地獄の12年間。

それでも、そこはやはりタイ。というか東南アジア。カネの力である程度は解決できてしまうのだが。

ただ、著者が刑務所に入っていたのが1980年前後なので、今から30年も前の話だ。
現在とはタイ国内情勢も国際的圧力などもかなり違っているので、その辺は差し引いて読むほうがいいかも。

というか、ぶっちゃけ、かなり創作も混じっているはずだ。

でもおもしろいから許す。

文章も平易で読みやすい。読み応えのあるエピソード満載で飽きさせない。
刑務所に入るまでのエピソードもおもしろい。

特にインドでの美女との幻想的な逢瀬のエピソードはまるで映画のよう。映画「パピヨン」を思い出した。
地獄のような刑務所を舞台にしているという点も「パピヨン」と共通している。
たぶん、著者はそうとう「パピヨン」に影響されているはず。

ファランによるタイ刑務所体験記は何冊も出ているが、その中でも、かなりおすすめ。

邦訳は出版されていないみたいだ。こんなにおもしろいのにもったいない。
タイ国内での本屋では未だに平積みにされていることが多く根強い人気。

なお現在でも「バンクワン刑務所」は存続しており、日本人服役者も数名いるらしい。
誰にも面会をする予定はないけれど、機会があれば刑務所の内部を一度のぞいてみたい。

白い粉には手を出すな。
粉ふくまでやりまくれ。

どうやら、これがタイでの正しい遊び方のようです。

書籍版の他、kindle版も出ている。

日本語で読めるバンクワン刑務所手記はこちら。わたしは英語版で読んだ。

映画「パピヨン」。スティーブ・マックィーンとダスティン・ホフマン主演。
脱獄映画の決定版とも言うべき名作。マックイーンの演技が素晴らしい。

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