先のパタヤ滞在中の話。
バービア群をうろうろしていると、遠くからわたしの名前が呼ばれた。
声の主は、知り合いのバービア嬢だった。
年齢は35歳くらいで、二年ほど前からの知り合い。
店を転々としているようで、最近姿を見かけなくなっていた。
こんなところにいたのか。
せっかくの再会なんで隣に座って一緒に飲む。
が、彼女はこのバーで働いているわけではない
ファランの上客を何人も抱えており、単に暇つぶしで友だちのいるバービアに飲みに来ているだけだ。
ついでに新たな客となりそうなファランを見つけられたらラッキーといったところか。
いわばフリーランスのバービア嬢のような存在。
現在は、スウェーデン人をつかまえて、よろしくやっている。
そのカレが、深夜まで飲み歩いており、電話がかかってくるのを待っているそうだ。
35歳の彼女。
失礼な言い草で申し訳ないが、一般的な日本人男性から見たら、おおよそペイバー対象からは外れるであろう容姿をしている。決して美人でもなければ、スリムでもない。
35歳というと、日本ではまだ熟女と呼べない年齢かもしれない。でも、イサーンから出てきた35歳の女性たちは、わたしの目からは熟女に見えてしまう。
彼女は、そんなどこにでもいそうな熟女バービア嬢だ。
でも、ファランには大人気。
性格はとても明るくて、なおかつ甘え上手。
男心を絶妙にくすぐってくる。
英語のスピーキングもうまい。
たしかにファランから人気があるのもうなずける。
つねに複数のファランを転がしている。
わたしも実際にそのうちの一人や二人を紹介されたことがある。
「マイダーリンよ、うふっ」
おい、ダーリンが何人いるんだよ、まったく。
他にもいっぱい男がいるって、そのファランにばらしてやろうか。
お相手は、だいたい50代から上は70歳くらいまでのファラン。
おとなしめの初老のファランが多い印象。
彼女とファランがバービアに飲みに来るとする。
まわりには彼女の友だちのバービア嬢が何人もいて、一緒に飲むことになる。
その輪の中にわたしもお呼ばれする。
バービア嬢同士の会話はもちろんタイ語で、わたしも会話に参加する。
すると、タイ語のわからないファランは完全に蚊帳の外となってしまう。
たまに、彼女がファランをフォロー。
ついでにドリンクもおねだり。
彼女にデレデレのファランは、もちろんオッケーして、彼女やバービア嬢たちにドリンクを奢る。
なぜか、わたしにもドリンクがまわってくるという寸法。
わたしは、このパターンでタダ酒を飲むケースがとても多い。
蚊帳の外におかれ、ドリンクをたくさん奢らされていても、ファランはニコニコ顔だ。
みんなハッピーなんで、これでよし。
まあ、とにかくファラン転がしの名人だ。
過去、最高で月7万バーツの送金を受けていたらしい。
パタヤ滞在中で一緒に過ごしているファランがいても、隙を見ては別のファランにビデオコール。
で、お約束の「I miss you」「I love you」
もう節操の無さがすごい。
だが、当の本人はあっけらかんとしたものだ。
だって、これが私の仕事で、私はカネを稼ぐ必要があるの、悪いことじゃないでしょ
うん、確かにそのとおりだ。
反論の余地はない。
彼女や彼女と同じようにパタヤへ出稼ぎにきている女性たちは、カネのために働いているのだ。
最後は、数あるファランの中から結婚相手をつかまえて、イサーンの故郷に大きなファラン御殿を建ててもらい、子どもも作れば、一丁上がり。
イサーンにおいては、最高レベルの大出世コース。人生の勝ち組だ。
がんばってね~
バービアで35歳の彼女としばらく歓談。
ほどなくして、スウェーデン人ファランから連絡が入る。
これから合流して夜を過ごすようだ。
お互いにチェックビン。
楽しい酒だった。
一緒に店を出る。
彼女は左へ、わたしは右へ。
パタヤにいる限り、またどこかで会えるに違いない。
たぶん、違う男をつかまえているだろうけど、それはそれだ。
うん、自分のため、家族のため、かんばってほしい。
若さという武器は失っているが、器量と愛嬌とコミュニケーション能力でのし上がっていく熟女バービア嬢たちのしたたかさと生命力には、ほんと、感服させられるのであった。