タイ訪問まであと少しだが、カラオケ嬢とは毎日のようにLINEのビデオコールでやりとりしている。
わたしがパタヤへ到着する予定日はすでに伝えてあるが、彼女はすっかり待ちきれない様子である。
「明日は何日?」としきりに聞いてくる。
「何日?」と日にちをたずねるタイ語は、「ワンティータオライ」と言う。
ワン=日
ティー=「~で」という前置詞
タオライ=いくら
たとえば今日が13日ならば「ワンニー ワンティーシップサーム」となる。
ワンニー=今日
プルンニー(実際の発音はプンニーに近い)=明日
「プンニー ワンティータオライ」で「明日は何日?」という意味になる。
カラオケ嬢は、この質問を何度もしてくるのだ。
しまいには、「明日は○○日だよね?」と、わたしがパタヤを訪れる日を明日にしようとする始末。
「違うよ」とわたしが答えると、怒り出す。
なんで明日じゃないのよ~
早く来てよ~
と、ダダをこねる。
まったく困ったものだ。
そうかそうか、そんなにわたしに会いたいのか。かわいい奴め。
とはいえ、そこはタイの夜の女性。
恒例のお土産おねだりも始まる。
お土産や贈り物のことをタイ語で「コーンファーク」と言う。語尾のクは、ほとんど聞こえない。
英語ならギフトとかスーベニア。
カラオケ嬢の欲するお土産は3つ。
1 焼酎
2 キムチ
3 香水
さすが酒と食べ物に目がないカラオケ嬢だ。まず、焼酎とキムチがランクイン。
焼酎は、きちんと「ショーチュー」と発音している。
なんでも日本の焼酎が飲みたいらしい。
キムチは、ラーメン(これも日本語で発音している)と一緒に食べるとおいしいから、おみやげで持ってきてほしいそうだ。
まあ、日本と韓国がごっちゃになっている気もするが、たしかに焼酎とキムチはおいしいんで、別にいい。自分でも飲み食いしたいくらいだ。
焼酎とキムチは用意しよう。とはいえ、機内持ち込み荷物にするのは難しそうなんで、パタヤの輸入物スーパーマーケットで購入するかもしれないが。ついでに、味付け海苔を買ってもいい。
3つ目の香水も同様。これは、空港の免税店でなるべく安いものでも買ってみるか。
香水は、タイ語で「ナムホーム」だ。ナムが水で、ホームがいい匂い。
この3つは、カラオケ嬢から何度も聞かされており、わたしもすっかり覚えている。
「もう一つほしいお土産があるの。覚えている?」とカラオケ嬢が真剣な顔で質問してきた。
さて、なんだろ。4つ目はわたしには覚えがない。
「ジャムメダイ(覚えていない)」とわたし答えると、カラオケ嬢は不敵な笑みを浮かべる。
そして、一言、
「タン」
タン=お金
4つ目のお土産は現金か。
そうだよね。お金が最高のお土産だよね。
わたしのことを待っているわけじゃないもんね。
待ち焦がれているのは、わたしの現金だもんね。
いいんだいいんだ。
それが現実だ。それが、答えだ。
どんなに「miss you」だの「キットゥンクン」だのと連呼しようが、恋しいのはお金なのである。
この世で最強なのは、やっぱりお金なんだよ。
そんな現実をまざまざと思い知らせてくれるのが、タイの夜の女性なのだ。
ま、カラオケ嬢は「タン」と言ったあとは、ぺろっと舌を出して、うひゃうひゃと笑っていたけど。
半分冗談、半分本気だろうね。
いや80%くらいは本気かな。
一緒に過ごす間は生活の面倒くらい見てあげるんで、現金を渡すのは間違いないんだけど、もうちょっとオブラートに包んで要求してほしいものだよなあ。
でも、カラオケ嬢はやっぱりかわいい。一緒にいると楽しい。
ほどほどの金銭的援助だけで済ませて、楽しい時間を過ごしたいものだ。
それがパタヤでの正しい過ごし方だと思う。
ちなみに、まったく男女関係のない、単なる友だちのバービア嬢からは、日本のお菓子をお土産に頼まれている。
お約束の抹茶味チョコレートがいいそうだ。
最近ではタイのスーパーでもキットカット抹茶味が手に入るようになったので、以前ほどの神通力はなくっているが。
コロンやポッキーの抹茶味にいたってはコンビニでも売っているほどで、日本とタイの距離の本当に縮まっている。
タイへのお土産も難しくなってきたなあ。
キットカットやポッキーはやめて、チロルチョコにしようか。ちょっとおいしそう。自分で食べたいくらいだ。