深夜のソイブッカオを千鳥足でふらふらと歩いていると、耳慣れたビートとサウンドが耳に飛び込んできた。
シンプルな3コードの繰り返しだが、その中毒性は音楽史上屈指の破壊力をもったナンバー。
重厚にして跳ねたリズムを叩き出すドラム。
地を這いながらもグルービーなベース。
空間を切り裂き、脳みそを揺さぶるギター。
体ごと浮遊させるような快楽を与えるハモンドオルガン。
そう、R&B史上最高のコンボと謳われた、ブッカーT&MG'Sだ。
曲はもちろん、「グリーン・オニオンズ」
まさか、アメリカ南部にあるスタックスのスタジオから遠く数万キロ離れたタイの地で、それもパタヤのソイブッカオでこの曲が爆音で流されているとは!
思わず、音のするほうへ吸い込まれていった。
バーだ。
店頭にはヴェスパとランブレッタが置かれている。
バーの名前は、「SCOOTER'S BAR(スクーターズバー)」と書いてある。
モッズバーとしてのスクーターズ
ここは、パタヤ。
バーといえば、バービア。
当然、対応してくれるのは、ちょっと露出度の高めのうら若きタイガールたち。
体のラインがばっちりわかるほどの細身のTシャツと脚線美を強調するホットパンツがユニフォーム。
いいね。
でも、今は音楽だ。
テーブル席に案内された。
イスは、ターゲットマーク。
壁には、ヴェスパやランブレッタの写真が多数。
ポール・ウェラーのライブ告知チラシも張ってある。
BGMが変わる。
スモール・フェイセズの「レイジー・サンデー」が流れる。
間違いなく、ここはモッズ・バーだ。
60年代ロンドンを席巻した、オシャレでクールをモットーとするモダニストたち。
彼らのことをモッズと呼ぶ。
モッズたちが愛した音楽が、ザ・フー、スモール・フェイセズ、キンクスなどの自国のバンド、そしてアメリカの黒人音楽だ。
このバーのBGMは、そんなモッズナンバーのみで構成されている。
客は、全員ファラン。
めくるめくファランワールド。
ビール片手に踊ったり、バービア嬢に抱きついたりしている。
でも、そんなのは気にしない。
わたしが一人で音楽に耳を傾けていると、ちょこちょことバービア嬢たちが絡んできてくれる。
意外とフレンドリー。
バーのボスは、イギリス人。ロンドン出身だそうな。年齢は50代後半くらいかな。たぶん、オリジナルのモッズ世代ではなさそう。
気さくに話しかけてくれた。
ついでに、リクエストを依頼。
まずは、スモール・フェイセズの「オール・オア・ナッシング」
ついで、ザ・フーの「キッズ・アー・オールライト」
で、サム・クックの「ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ」
もう、悶絶。
ブリティッシュ・ビートや60年代R&Bに狂っていた20代の頃の情感がよみがえり、わたしは思わず泣きそうになった。
わたしの趣味を気に入ってくれたボスとがっちり握手。
お互い母国から遠く離れた異国の地において、音楽でつながり合う外国人同士。
音楽に言葉はいらないし、国境もない。
だって、ここパタヤだよ。
ロンドンのパブでもなければ、日本のモッズバーでもない。
パタヤのソイブッカオだよ。
こんなところで、イカしたモッズに出会うとは!
おっと、音楽の話はここまでだ。
酒と女の話をしよう。
バービアとしてのスクーターズ
イカしたモッズバーであるが、同時にバービアでもある。
つまり酒と女だ。
シンハーやリオが80バーツ。
サンミゲルライトが90バーツ。
2本目は、半額となる。
つまり、シンハーなら2本飲んで、80+40で計120バーツだ。サンミゲルライトなら135バーツとなる。
ただし、3本目はまたリセットされるんで元の値段に。4本目はまた半額に。
偶数本飲むなら、お得になるね。
カクテル系も多数揃っている。
普通のバービアよりは本格的に作ってくれる。
B52がよく出ているかな。
レディドリンクは、たしか130バーツだったような。
ここはパタヤのバービア、もちろん、ペイバーも可能だ。
本場イギリスや日本では、ありえないシステム。
でも、バーファインのシステムが少々ややこしい。
時間帯と曜日によって変化する。
一番安くて350、一番高くて750だったような。
詳しく聞いたのだが、忘れてしまった。
現地で確認のほどを。
ママさん格の女性は、少々日本語が話せるみたい。
英語とタイ語が不安なら、ママさんを頼ろう。
さて、肝心のバービア嬢たち。全部で7,8人といったところ。
南国系のちょっと濃い顔立ちの女性が多い印象。
黒くて長い髪。
スタイルはみんなばっちりだ。
そろいのTシャツとホットパンツがとてもセクシー。
ゴーゴーバーで働いていてもおかしくないレベルの子が2,3人ほどいる。
いかにもファラン好みの品揃え。
ボスの趣味なのかね。
平均レベルは、ブッカオのバービアではトップクラス。
一人だけ、ショートカットで小柄の子がいる。
顔立ちもファラン好みからは外れていそう。
本人も自覚していて、「日本人が好き~」とか言っている。
単なるお世辞かもしれないが、別に悪い気はしないよね。
ちなみに、わたしは誰もペイバーしていない。
ここは、音楽と酒を楽しむバーと決めている。
深夜1時頃に訪れて、ビールを飲みながら、音楽を聞いている。
たまに、ボスとちょっと会話したり、寄ってくるバービア嬢をからかう程度。
これでいい。
営業は深夜3時まで。
昼間も開店しており、バーというより、カフェになっている。
イカした音楽、うまい酒、いい女。
この三つが揃っていれば、他には何もいらない。
まあ、ビールなんてどこでも同じだし、音楽はユーチューブで検索しているだけだし、バービア嬢はあくまでもバービア嬢だけど、そんなことはどうでもいいのだ。
この3つの合わせ技が、うれしいんだ。
完全に女探し目的で訪れるバービアではない。
鼻息荒く訪れても、肩透かしをくらうだろう。
また、ビリヤードやゲームでもしながら、まったり酒を飲むバービアでもない。
4目並べやサイコロゲームで遊んでいる人を見かけたことはない。
あまりこの手のバーに慣れていない日本人が行くと、ひどいアウェー感にさいなまれるかもしれない。
たしかに、ここはファランワールドで、アジア人が一人でいると、たまに変な目で見てくるファラン客がいないわけじゃない。
が、心配は無用。
少なくともボスのロンドン野郎はとってもフレンドリーでいい奴だ。
バービア嬢たちは言わずもがなで、一人でいると、必ず誰かが寄ってくる。
放置されることはまずないだろう。
音楽を聞きたいわたしは、逆に放置してほしいんで、カウンターで一人ぽつんと座っているが。
もし、あなたが、60年代音楽好きで、酒も好きで、南国系タイガールが好きなら、迷わず一度は訪れてみるべきだ。
きっと、楽しめるはずだ。
場所は、ブッカオのやや北側、バンコク銀行の斜め向かい側くらい。
ソイハニーをブッカオに出て左折して、歩いて1,2分といったところか。ホテル「サワディ・サイアム」を越えて、すぐ右手あたり。
目印は、ヴェスパとランブレッタだ。
まさに、スクーターズバー。
地図
(2015年7月18日追記)
読者ヨッシーさんからレポートが届きました。
以下、載せておきます。
昨夜、スクーターズバーに行ってきました。独りで入りましたが、楽しかったので3時間くらい居ました。13人居る女の子の半分に囲まれましたので高くつきましたが…(*_*) 一人気に入った女の子をバーファインしようとしましたが、その子だけマイパイでした(>_<) ママさんやボスとも仲良くなれましたので次回またチャレンジしたいと思います。 でもシステムを聞くと、8時でバーファインは750baht、ロングは3000~3500bahtでしたね。 ゴーゴーとあまり変わらない強気の値段設定なのでかなり驚きました。 遊ぶには良いですがバーファインには不向きのお店です。
バーファインの額はすでに聞いていましたが、ロング3000~3500は、予想外の高値ですね。深夜12時以降になれば、バーファイン、チップとも下がりそうな気もしますが。
在籍嬢の人数も増えてきたようで、飲みに行くなら楽しいバーです。
次回は、なんとか攻略してください、ヨッシーさん。レポート、ありがとうございました。