タイでは10月1日に規制緩和が実施された。
タイはいよいよ国内旅行ムードが高まっている。
外国人観光客に向けたバンコクやパタヤの開放は延期となったが、国内旅行は再開となる。
プーケットやサムイ島では、ワクチン接種証明や陰性証明の提示が要求されるなど入県規制が厳しいが、パタヤのあるチョンブリ県は規制ゼロだ。誰でも好きに入ってくることができる。
そんな週末のパタヤビーチはどうだったか。
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日曜日夕方のパタヤビーチ
昨日、日曜日夕方のパタヤビーチはタイ人の家族連れや若いグループでにぎわっていた。
パタヤビーチロード沿いにはびっしりと駐車車両が並ぶ。
これまではセントラルフェスティバル近くのビーチロードに駐車車両が多かったが、昨日はもっと先のウォーキングストリート近くまで車列が延びていた。
ビーチロードを走る車も多い。
そして、ビーチパラソルがすでにたたまれたパタヤビーチには、家族連れや若いグループが思い思いに楽しんでいる姿があちこちで見られる。
子供たちが遊泳エリアの海に入ってばしゃばしゃと遊ぶ。
若いカップルがやがてくるサンセットを眺めながら肩を寄せ合う。
若いグループが嬌声を上げながらインスタ撮影にはげむ。
浮き輪をたくさん抱えた物売りがビーチを歩く。
これほどの人がパタヤビーチに上に集まっている景色は、本当にひさしぶりだ。
洪水で崩壊した砂浜はほぼ修復できたようで、ちゃんと整地されている。
つい先日までは、パタヤビーチは無人の地であった。
ロックダウン中はビーチの利用そのものが禁止されていた。
禁止措置が解除されても、ビーチ利用者はさして増えなかった。
10月に入り、ロックダウン措置がさらに緩和され、タイ国内観光客がパタヤに遊びに来るようになった
チョンブリ県内やバンコク近郊から遊びに来るタイ人グループがほとんどだろう。
パタヤは都会から気軽に遊びに来れる場所だ。
今のパタヤには、かつて世界一下品なビーチと呼ばれた頃の面影はまったく感じさせない。
世界一下品なビーチは消えた
ほんの1年半前まで、ビーチ沿いの椰子の木の下には、ココナッツゴーストが出現していた。
夕方から夜中にかけて、数え切れないほどのゴーストが立っていた、道行く外国人男性に声をかけたり、かけられたりしていたものだ。
パタヤビーチを端まで歩けば、その先にはウォーキングストリートが待っている。
圧倒的なネオンと人いきれで歩くのも困難なほどのアジア屈指の夜の歓楽街だ。
が、パンデミックがパタヤを直撃し、観光客がいなくなり、街はロックダウンされ、パタヤビーチの椰子の木陰からココナッツゴーストが消滅していった。
正確には道路を渡った先でまだかろうじて生存しているが、かつてに比べると格段にゴーストの数は減った。
ウォーキングストリートからネオンサインの明かりが完全に消えた。
ウォーキングストリートはゴーストタウンと化した。
パタヤビーチではココナッツゴーストのかわりに、家を失った人たちがビーチに住み着くようになった。
その数は次第に増えていった。
木陰でこざを敷いてグループで固まっていたり、雨の心配がない時は砂浜の上で寝ていた。
昼間はビーチロードで炊き出しが行われる。その際には、長蛇の列ができる。
パタヤビーチは世界一下品なビーチではなくなった。
パンデミックの犠牲となった人たちがしかたなく住み着く場所となった。
ビーチは、何もない、ただの砂浜と化していたのだ。
それから、パタヤビーチ景観改良工事の開始と国内観光旅行再開に伴い、パタヤビーチ上ではホームレスの人たちの姿をあまり見かけなくなった。
市当局が保護して施設へ移したか、昼間はどこか別の場所で過ごしてからビーチが閉まる夜9時以降の時間帯にまた戻ってくるのかもしれない。
ココナッツゴーストが消え、ホームレスの姿も見かけなくなり、週末になると家族連れや若者グループが遊びに来るだけの健全な観光ビーチ。
それが今のパタヤビーチだ。
それも派手さのない、田舎のビーチといった風情だ。
都心部に住む人たちが車で1,2時間で来られる気軽なビーチである。
とても年間800万人ほどの外国人観光客がやって来ていた世界的な観光地とは思えない光景である。
かつて世界中から愛と欲望に飢えた男たちが集結していたパタヤは、今ここにない。
でも、長く続いたロックダウン中の悲惨な光景を見続けてきた身からすると、パタヤビーチにこれほどの人が集まる様子は、正直、安心した。ほっとした。人間が戻ってきたと感じさせた。
誰もいないビーチなんて、パタヤじゃない。
家族連れでも若いグループでもなんでもいい。
人の息吹がパタヤで感じられるようになった。
平日はまだ静かになるだろう。週末だけの一時だけとしても人が戻ってきたのがうれしい。
パタヤの復活
が、パタヤの復活はまだまだ先だ。
欲望まみれの外国人たちが戻ってこないかぎり、パタヤは復活できない。
パタヤビーチをマイアミのような健全ビーチ化しようという動きがある。
ウォーキングストリートを夜の街からショッピングアーケードに作り変えようという動きもある。
今のパタヤビーチは健全ではあるが、国際的なビーチリゾート地では決してない。都会のちょっと郊外にある週末だけ軽くにぎわうただの行楽地に過ぎない。
パタヤには、世界一下品なビーチという呼び名がよく似合う。パタヤ好きにとって、それは名誉ある称号である。
パタヤビーチとウォーキングストリートが元の姿を取り戻すのはいつになるのか。
それとも、もはや失われた姿は永遠に取り戻せないのだろうか。
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