42日目
どこまで寝続けるのかカラオケ嬢
相変わらずカラオケ嬢はひたすら寝ている。
昨夜床についたのが深夜3時頃。
わたしは午前11時には起きて、パンとコーヒーで朝食を済ませている。
正午を経過しても、彼女が起きる気配はまったくない。
午後1時、午後2時、まだ起きない。
寝息が聞こえてくるので、本気で寝入っているようだ。
午後3時。まだ寝ている。睡眠時間12時間経過。
すげえ。
わたしは腹が減ったよ。ランチタイムはとっくに過ぎているよ。
もう待てない。
こっそりと部屋を出て、屋台で食料を仕入れた。
イサーン屋台メシ。
ラーブムー、春巻き2個、ゆで卵、カオニャオでしめて85バーツ。
ラーブはダシが効いているタイプで、やや汁気が多い。
辛さ控えめでけっこううまい。50バーツ。
揚げ春巻きは、まあ普通かな。
甘辛いナムチム(タレ)をかけて食べる。1本10バーツ。
まずまず満足の昼飯。というかもう午後3時過ぎだけど。
彼女のぶんは、そのまま蓋をして保管しておく。
午後4時、カラオケ嬢がもぞもぞと起き出してきた。
おお、ついにお目覚めですか。
連続睡眠13時間っすね。
若いっていいね。年を取ってくると、長時間連続で眠るのも疲れてくるんですわ。
これまた例によって「ヒューカオ!(はらへったー!)」と声を荒げるカラオケ嬢。
食欲と睡眠欲のかたまりだな。
「ミーカオ(ご飯あるよ)」とわたしがポリ容器を指さすと、ニンマリと笑うカラオケ嬢。
蓋を取り、中身を見ると、「ラーブ!」とこれまた喜ぶイサーン出身者である。
寝起きにラーブとカオニャオと春巻きをむさぼり喰っておりました。
もう一度寝ようとする彼女。
おいおい、まだ寝るのかよ。
その前にシャワーを浴びてこいと命令すると、しぶしぶと彼女は従っていた。
シャワー上がりの彼女のバスタオルを剥がして、今度はわたしの食事タイム。
おいしくいただきました。
「ヌアイヌアイ(疲れた疲れた)」と言って、彼女はふたたびベッドに潜り込む。
本気で二度寝する気のようだ。
またしても寝息を立てて本気睡眠モード。
ふたたび彼女が目を覚ましたのは、夜7時過ぎなのでありました。
さらに睡眠時間2時間追加。
合計15時間かあ。
アリとキリギリス論争
暇があったらとにかく睡眠を取るのがタイ人スタイル。
というか、たぶん南国では、どこも似たようなものなんだろうね。
暑い国では、炎天下で行動し続けることは困難。
体力が奪われるので睡眠で体力回復は必須。
だいたい暑いんだから、動く気力なんてないよ。
日陰があればお昼寝。
店舗の営業中でもお昼寝。
客が店主を起こさないと商品を買えない始末。
昔、ドンムアン空港の免税店の従業員が床で堂々と寝ている姿すら見かけたことがあるぞ。
でも、このカラオケ嬢、さすがに寝すぎろだろ。
10時間くらいまでなら、それほど珍しくない。
前日までの疲れがたまっていて、たまたま12時間くらいの長時間睡眠になってしまうこともあるだろう。
が、この21歳カラオケ嬢は、ほぼ毎日のように12時間以上寝ている。
ここまで睡眠に貪欲なタイ女性ははじめてかも。
ま、昼間の時間帯に、夜の女性に電話して「タムアライユー(何しているの?)」と聞くと、答えの大半は「ノーン(寝ている)」のような気がするけどね。もしくは、「ギンカーオユー(ご飯食べている)」だな。
とにかくタイ人はよく眠る。よく食べる。
ゆっくりと睡眠を取り、ゆっくりとご飯を食べることが人生での最大の優先事項のごとくだ。
あくせく働き、睡眠時間を削って、ストレスをためこみ、しまいには「おれ、最近毎日2時間しか寝てないんだよねえ」と自慢気に忙しさをアピールするような一部の日本人の思考回路は、多くのタイ人にはまったく理解不能かもしれない。
カネはないけど睡眠時間はたっぷり取って、好きな時に好きなだけ食事を食べている南国のちょっと貧乏な人と、カネも貯金も家も車も地位もあるけど、睡眠時間がなくて、あくせく働き、空き時間に立ち食いうどんをかきこみ、ストレスをためこむ北国のちょっと金持ちの人の、どちらが幸せだろうかね。
ま、古臭いアリとキリギリス論争だけど、南国でだらだらした沈没生活を送っていると、ついついそんなことを考えしまうのだ。
とはいえ、わたしは外国人旅行者。
本国で得た所得を元に、他所様の国に居候させてもらっている。
タイ人の生活スタイルに対して、思うところはいろいろあるが、「食事時間と睡眠時間をコントロールして、そのぶんを仕事や学習にまわして効率よく生活していけ。それが金持ちになり生活が豊かになる道だぞ。」なんて訳知り顔アドバイスは、それこそ余計なお世話だ。
これが彼らの生きる道なのだ。
というわけで、彼女が自然に起きだすまで、わたしはただじっと彼女の寝顔を眺めるしかないのであった。
人生って、難しいね。
カラオケ嬢と食事
夜8時前、ふたたび腹が減ったとうるさいカラオケ嬢をつれて、晩飯へ。
ゲンチュートーフ
野菜と豆腐のさっぱりスープ。豚の挽肉入りだ。
まったく辛くないタイ料理スープの代表的存在かな。
これはキャベツ入りだが、普通は白菜がたっぷり入っている。
豆腐は、いわゆる玉子豆腐で、日本で食べるものと一緒。
日本人にはまったく違和感のないタイ料理だ。
トーフの発音がちょっとむずかしい。トーフじゃなくて、ターフォーみたいな感じで。
それとパットプリックゲーンムー。
唐辛子ベースのタレで炒めた豚肉。辛くておいしい。
ごはんによく合う一品でおすすめ。
あと、ご飯2皿と水2本とビール1本で合計180バーツ。
ブンブンしたのでカラオケ嬢にお手当を渡しておく。
1000バーツとお小遣い200バーツ。
連続3日くらい一緒に寝ているような気もするが、ブンブン代の対価してのチップはそんなものだ。
電話のトップアップ代50バーツとかモトサイ代とか食事代とか細かい出費はかかるけどね。
カラオケ嬢ご出勤
もう時刻は夜9時。
でも、これから出勤するというカラオケ嬢。
ママさんからの出勤要請の電話があったのだ。
ママさんからの電話に悪態をついていた。
出勤要請がなければ仕事を休むつもりだったのか、カラオケ嬢よ。
ええい、前言撤回じゃあ。
働け、このやろう。
だから、いつまでたっても貧乏なままなんじゃ。
「キーキアット(めんどくさがり屋)」と言って、いつまでも文句たらたらのカラオケ嬢を一喝。
「パイ タムガーン シ!」
さっさと仕事行け!
で、しぶしぶ出勤していくカラオケ嬢をお見送り。
ふう、疲れる女だ。
世話賃をほしいくらいだよ。
深夜1時過ぎ、仕事終わりの彼女を迎えに行く。
「ヌアイヌアイ(疲れた疲れた)」と相変わらず文句たらたら。
おいおい、数時間しか働いてないだろ。
他のゴーゴー嬢やバービア嬢をちっとは見習えよ。
ブンブンなしに抱き合って一緒に眠る。
ああ、また明日も夕方近くまで寝ているんだろうなあ。
まあ、かわいいから、許しちゃうけどね。
勤勉とされる日本人の端くれとして、いいなのかあ、こんな自堕落なパタヤ沈没生活していて。