33日目
妹と大げんかした27歳バービア嬢は、一晩中ぐっすりと寝ていた。
翌朝になっても、なかなか起きない。
いつものことながら、タイ人の睡眠時間は長い。
わたしはとっくに起きており、パンとインスタントコーヒーで朝食をすませているが、まだ彼女は起きない。
もはや昼飯の時間である。
イサーン屋台で昼食
ぐずぐずしている彼女に、何が食べたいか質問。
「アオ アライ」とか「ヤーク ギン アライ」と聞けばいい。
すると、プラードゥックとソムタムが食べたいという。
プラードゥックか。なまずだな。
たぶん、日本ではナマズを食べる習慣は少ないと思う。
でも、タイではとてもポピュラーな食用魚。
屋台で炭火焼きにしているところをよく見かける。
ちなみに、英語でナマズは「cat fish」と呼ぶ。ヒゲが生えているところが猫に似ているから、らしい。
そんなわけで、一人でイサーン屋台へ買い出しに。
プラードゥックヤーンとガイヤーンをあたためなおしてもらう。
日本で想像するナマズは、ちょっと平べったくも太っているみたいなイメージだけど、意外と普通の形。
プラードゥックヤーン、ガイヤーン、ソムタムパラー、カオニャオ2人前で110バーツ。
香ばしい匂いに誘われたのか、なまずのように寝こけていたバービア嬢が、ようやく起き出してきた。
向かい合わせで、いただきます。
うん、なまずもおいしいよね。
あぶら分がちょっと多いけど、臭みもなくて、食べやすい。ナムチム(タレ)をつけて食べると、さらにおいしい。
イサーン出身の彼女は、カオニャオをスプーン代わりにして、器用に魚の身だけをほじくって食べていた。
見事で指さばきですな。
バービア嬢へ500バーツ貸付け
食後、何かと忙しいようで、バービア嬢は一度部屋に戻ると言う。
ブンブン無しなんで、チップも無し。
しかも、向こうから押しかけてきた形で、疲れたといってずって寝ていただけなので、なおさら必要がない。
(もちろん、はじめから添い寝だけでもチップを払うなどの約束があれば別だ。)
せいぜいバイタク代くらいなものだろうが、彼女はマイバイク持ち。名分が何も見当たらない。
でも、500バーツほしいと言う。
ダメだと断る。
「じゃあ貸して」ときた。
どうしても500バーツが必要だそうな。
必ず返すから、お願いと。
しょうがないなあ。
「シャイニー ナ」と強調しながら、500バーツ札を渡した。
シャイニー、もしくは、チャイニー
詳しくは知らないけど、タイ語で借金とかそんな意味らしい。
「わかった。あとで返しに来るね。もしくは、ブンブンでね、ウフフ」と蠱惑的な表情を浮かべるお姉さん。
将来のブンブンを抵当に入れて借金する気か。
うう、おそろしい。
借金返済は体でね
で、数時間後。
夕方になって、バービア嬢が部屋にやって来た。
意外と早い行動だな。
冷蔵庫を勝手にあさって、まずはかけつけビールを一本。
すると、これまた不敵な笑みを浮かべるお姉さん。
「アプナムレーオ(もうシャワーは浴びたわよ)」と言って、さくっと、服を脱ぎ捨てるではありませんか。
この人、本気や。
体で借金を返しに来よったで。
ベッドの上で挑発する妖艶な27歳のバービア嬢。
よし、その挑戦受けて立とうではないか。
ふ~じこちゃ~んと、一瞬でこちらも衣服を脱ぎ捨てて、襲いかかる。
が、あっさりと抜かれてしまう。
次元なみの早撃ちであった。0.3秒。なんとも頼りがいのあるマグナムである。
発射と同時に、借金500バーツ完済。
ああ、すっかり利用されちゃってるなあ、わたし。
拙者、修行が足らん。と、どこからか五右衛門の声が聞こえた。
まあ、一発500バーツなんで、まあいいか。
今どき、パタヤで一発500バーツは、かなり厳しい。しかもバーファインなしだしね。
お得といえばお得。
「じゃあ、仕事行ってくるね」とそそくさと着替える27歳。
はあ、そうですか。わかりました。
お仕事がんばってください。
と、狐につままれたかのような気分のまま、妖艶バービア嬢を見送ったのであった。