20日目
夕方、所用のため友人らと合流。
用事を終えて、路上でたむろしていると、すぐ近くにあるバービアから呼び込みを受ける。
よく見ると、ちょっとバービアには似つかわしくない清楚なドレスを着た若い女性がちょこんと座っているではないか。
ママさんらしき熟女がしきりにその若い女性を指さしている。もう苛烈なまでのアピールだ。
しょうがないなあ。
本当は興味がないんだけど、そこまでされたら話だけでも聞かないとしょうがないじゃないか。
いや、本当に若い女性なんて興味はないんだけどなあ。
と、にやついた顔で脇目もふらずにバービアへ近づくと、危うく車に轢かれそうになった。
まじまじとその子を観察。
若い。かわいい。
会話を試みるも、わたしのタイ語が通じにくい。
まわりの熟練バービア嬢の方々が、わたしのなんちゃってタイ語を、正調タイ語に翻訳してくれた。
彼女は18歳のMちゃん。今日パタヤについたばかりの完全新人。
いやいや、そんな若くてかわいい新人のバービア嬢なんて、本当は興味がないんだよ。
興味がないんだけど、わたしの下半身さんは、どうしても動機が不純なもので、言うことをきいてくれずに暴走してしまうし、わたしのか弱き心臓さんの動悸も激しくなってしまうのだ。
悪いのはわたしじゃない。
悪いのはわたしの身体のパーツたちなのだ。
困ったものである。
はやるパーツたちをなだめすかして、一度部屋に戻り、夜になってから出直すことにした。
焦ってはいけない。
相手は警戒心の強い初物である。じっくりゆっくり攻めるべし。
で、夜。
8時過ぎ。戦闘態勢は整った。
いざ、初物18歳の待つバービアへ。
到着。
あれ?
18歳の新人がいないぞ。
でも、さっきは見かけなかったかわいい子がもう一人いる。
とりあえず、こちらから。
この子も18歳。
若干プンプイだけど、ルックスよし。
バービアで働き出して1ヶ月。
子供なし、彼氏なし。
この子でもいいなあ。
半分冗談でペイバーできるか聞いてみると、答えは「ノー」。
「マイパイ(行かない)」と言うじゃないか。
あれま。単なる学生の手伝いバービア嬢なのかな。
そんな時、バービアのママさん登場。
さっき、18歳の新人バービア嬢を充てがおうとしていた張本人だ。
姿をくらましている18歳の新人を探そうとするママさん。
飯を食べに行ったまま、戻ってこないらしい。
なんてこった。
明日もう一度来いと言われる。
田舎からツテをたどってパタヤのバービアへやって来たものの、体験入店した一日目で恐れおののき逃げ出してしまうパターンだな、きっと。
明日も期待はできない。
じゃあ、この子でいいよと、もう一人の18歳を指さす。
「ヤークパイドゥアイ(一緒に行きたい)」とママさんに告げる。ママさんの後押しがあれば、ペイバー不可でも可に変わることが無きにしもあらずだ。
が、ママさんの返事は、
「パイメダイ。ルークサオ」
ずこっ
ママさんのリアル娘さんかよ。
そりゃあ無理だ。
「ハイタオライ(いくらあげる?)」とママさんが続ける。
わたしが言い淀んでいると、ママさんが追い打ちをかける。
「ソンラーンバー、テンガーンシ(200万バーツで結婚しろ)」
「ペーン。テンガーン、ソンセーンバー、チャイマイ(高いよ。結婚は20万バーツでしょ)」
それぞれの地方や家柄によって様々だけど、イサーンの結納金の相場は10万バーツから20万バーツ程度だと聞いている。
たまにバービア嬢に直接聞いてみると、おおむね20万バーツという返事が多い。
10年前にわたしの知人がイサーンの女性と結婚した時は10万バーツだったそうだ。
が、ママさんは小揺るぎもしない。その堂々たる顔つきと体つきと物腰は、強欲ババアっぷりを120%体現している。
なんでも、娘は高校を卒業したばかりで、子供もいないし、男もいないから、200万バーツだとのこと。それに日本人相手なら200万バーツは当然だと言う。
ま、冗談半分で言っているのだろうけど、このママさんなら本気に聞こえるし、たぶん実際に結婚するとなると本当に要求されるのだろうなあ。
あと、今はかわいい18歳だけど、あと20数年もすれば母親そっくりの外見になるかと思うと、金銭的負担を心配するよりも、わが将来の精神的負担が危惧される。明るい未来図がちっとも浮かんでこない。
でも何だかとっても楽しい時間だった。
ビール一本60バーツですごく楽しめた。
おつりの40バーツのうち、20バーツ札を一枚チップとして18歳の娘さんに進呈。
ママさんに20バーツ札を見せながら、
「ヤーク アオパイ ルークサーオ。ハイ サーオバー(娘さんを連れて行きたい。20バーツあげるよ。)」
最後はタイ語とイサーン語のミックス駄洒落でおしまい。
けっこう受けた。
ま、ルークサーオのサーオと、20のサーオでは、カタカナに直すと同じ表記となるが、実際の発音は違うはずで、決してわたしの駄洒落が通用したわけではあるまい。
単に、20(イーシップ)のことを、わざわざイサーン語で話す変な日本人を笑ったに過ぎないだろうけど。
こんなしょうもないやり取りの一つ一つが、バービアの楽しみ方の醍醐味だと思う。
この勝負、ドロー。
(つづく)
わたしのタイ語はかなりいい加減です。あまり信用しないようにしてください。カタカナ表記もかなりテキトウです。
まじめにタイ語を勉強するなら、この1冊がおすすめです。CD付きで、会話から文法、タイ文字までオッケー。
ただ、上記の本には夜の会話や単語がほとんど含まれていないので、夜の指さし会話集もついでにどうぞ。こちらはCD無し。